伝統と創意

第78回日本書芸院展


● 4月17日〜21日
● 大阪国際会議場 3F特設会場

井茂 圭洞

 

「懲忿窒欲(易経)」

 

 関西書壇の雄、日本書芸院の役員展。「伝統と創意」を掲げ、長い歴史を刻んできた。今展は「日本書道ユネスコ無形文化遺産登録推進展覧会」と位置付け、昨年12月の推薦決定から二年後の実現に向けて、ますます機運醸成に努めようとするもの。また初日には為末大氏による記念講演会を開催、会期中にはギャラリートークをはじめ、「対話型鑑賞会」や「街なか書道体験」なども併催して、書道文化高揚につなげた。
 今展の出品は580人。うち10人は50歳以下の会員からオーディションで選ばれた新進気鋭作家による「魁星作家コーナー」に大作を発表した。今回で20回目となる。メンバーは岡西光えん、北田翠芳、田村彰規、江川文子、太田小百合、田代和則、湯淺光峰、大林蒼樹、子安尊喜、中村心華。ここでは常務理事以上から28点を掲載した。井茂圭洞は万葉集からの二首を時間軸でつなげ、季節感を創出する。後半の盛り上がりに春の息吹が。尾崎邑鵬は境地の書。字座が動いても、紙の中心は微動だにしていない。黒田賢一は銀鼠の紙に墨がよく乗り、歌意が満たされている。池田桂鳳の三紙には調和体風から散らしへの流れがある。杭迫柏樹の今作は筆圧を抑えた書きぶりで白が広い。吉川蕉仙の大きな書は横画の方向に支えられている。真神巍堂は左右に開いた草体に見せ場を作る。土橋靖子理事長は1面に巻頭紹介した。副理事長陣では高木厚人の大字かなが随分見応えた。潤渇の線条はもとより、紙色マット色ともによく合い、古格と新風の融合を見た。同中村伸夫は円状に三字篆書をまとめて安定感を出した。同吉川美恵子は渇部の縦の流れに強い意志を感じさせる。明石聴濤の書きぶりは圧巻だった。詩の情景を託したかのような草書連綿の乱舞。まさに伝統と創意を思わせる作。近藤浩乎は天地にのみ少しのマットを入れたパネル貼りの作。それも奏効したか、線条変化とともに空間の柔らかな動きが表出される。森嶋隆鳳の貫徹する強靭な筆力や佐井麗雪の行書単体三行の筆脈一貫などにも見入った。田頭一舟の紙は墨を吸わず、その分、鋒の動きの濃淡がそのまま線中に定着し、かなの流麗を一層際立たせていた。日比野博鳳は独自の風を深化させようとする。中盤の懐抱の展開はその象徴ではないか。松村博峰の今作は、いろいろの表現要素をさりげなく取り入れて全体をまとめる。そこには一作一面貌を目指す作家の理念が潜んでいるに違いない。(篠原)