第65回現代書道二十人展の特集を3月号で紹介(二十人、各1点)させて頂いたが、古事記より4点の作品を出品された井茂圭洞氏に焦点をあて、歌と作品(歌意と文字構成及び料紙選定)の関連を探ってみたい。
倭建命御製の歌より、「やつめさす…」は、西征し、熊曾建を討伐して出雲に向かい出雲建を討った時に詠まれた。何れも策略によって成されるのだが、敵を倒せば大喜びして笑う。それが古代の戦闘歌謡だと聞く。この歌の作品の料紙は、混沌とした陰謀の気配ある灰肌色であり、国を統べることの意思の無常さをも暗示させる。作品構成は2つの文字群の呼応、空間性が高度に計算されている。もう1点は「倭建命/一本松」〈3月号紹介作〉。東征を終え、大和へと向かう途中_往路に婚約した美夜受比売の家にしばし入る。そこで、伊吹山の物の怪退治に出るも、山神「白猪」の報復を受ける。歩くことが出来ない程の体で_故郷の大和を目指す倭建命が尾津の崎で、東征往路に忘れてきた太刀が一本松のもとに残っていた。松の守護に感激して詠んだ歌が「尾張に…」だ。よろよろと歩く様の細かな筆線の振幅、発見の喜びの展開部だが、心は芯から晴れない。その気持ちが金絹(黄色)に籠る。
そして、掲載の「速總」である。古事記下巻「女鳥王(めどりのみこ)と速總別王(はやぶさわけのみこ)の反逆」の本意は、女の矜持と悲愛に燃えた逃避行か。金粉を佩いた朱色の紙(蝋箋?)に大胆に叩き付けたような激しい筆致の文字が沈着する。気持ちは強烈だが肝が据わるイメージだ。
女鳥王が速總に送った歌意は「ひばりのような小さい鳥でも天空を自由にかけまわっている。まして、隼の名をもつ速總別王様どうかあの『さざき(雀)=大雀命・仁徳天皇』をお取りになって(殺して)ください」。正に謀反をけしかける大胆な歌である。しかし、その思いは成就せず、断罪される。別の角度から書を読むのもいい。(松)
