第58回現代書道二十人展より


日本藝術院会員

井茂 圭洞

 

 第58回現代書道二十人展が、今年も新年2日から松坂屋上野店において開催され、大阪、名古屋、金沢と巡回されている。
 昨年10月30日、日展開催の前日、朝日新聞に載った日展問題の関連から二十人展の開催を危ぶむ声が聞かれたが、新聞社内部で特ダネとして意図的にスッパ抜いた社会部と、文化事業部との意志疎通が全く図られていないようで、主催者として何のコメントもなかった。一方で、文化論を抜きにして書の文化破壊を大声で叫び、一方では、書の伝統を未来へとつなぐ架け橋を担う二十人展を標榜する。複雑な気持ちの出品者と展覧者が多くいたことは否めなだろう。しかし、井茂圭洞氏は挨拶で、現代書道二十人展の存在意義を語り、「選ばれた以上各々のもつ技量を最大限に発揮した書作品を発表することこそ大切なこと、各書家は自分なりの書美を常に追い求めてきている。」と書家としての矜恃を明らかにした。
 いずれにしても、本展のメンバー入りは、書家を目指した以上最大の名誉として周知されている。その選定に主催者がどのように関わってきたのか、そこのところも今後は明確にする必要があるだろう。    
 さて、今展に井茂圭洞氏は古事記祝詞から4点を出品、黄土色の縦料紙の「お迎え/衣通王:きみがゆき…」は8面に紹介しているが、風呂先金屏風に華麗な扇面と白い加工紙を貼り交ぜて雅の世界を表現した意欲作を巻頭に挙げた。今回は全体的に濃墨で墨をたっぷりとのせ、特別大きな文字群を用いず、小振りな文字で鮮烈な響きをひきだしている。また、茶に金を掃いた扇面の文様に挑戦するかのようにあえて文字を重ね、文様の中に浮遊するような立体的な空間を創りあげている。和泉式部集の骨格を持ちながらも、自在に対比変化で調和をとる、これまでとはひと味違う世界をみせてくれた。とは言っても、深山龍洞師の教えの中で最も重要視してきた要白の美は、屏風左隻「脇机」の右下部と左上部に光渡っている。要白と矛盾抵抗の美、氏の根底にその二つがきっちりとある。(松原)

 

 

 

 


 

 

やすみしゝ我が大君の…(脇机/ 古事記祝詞・袁杼比 ) 41×59cm

をとめのいかくるをかを…(媛女/ 古事記祝詞・雄略天皇)27.5×53.5cm