-昭和36年以降の1名増員(4名体制)- 期待膨らむオープンスタンス 令和2年度 日本藝術院新会員(書) 12月号にもふれたが、昭和36年以来の藝術院会員(美術)定員枠の変更がなされ、ここ10年間空席の増加が続いている日本画の定員数を2名減じて工芸と書に各1名振り分けた。特に書部門は、折にふれて真偽不明の増員の問題が取りざたされ、立ち消えてきたが、書壇の殆どが望む増員が1名ではあるがやっと実現した。今回の補充選挙に、初挑戦で新会員を決めた謙慎書道会理事長・高木聖雨。関東の碑学派の雄、謙慎書道会所属の藝術院会員(小林斗あん氏)が逝去された2007年から、13年目の復活となった。 「氏は、長年の深い思索とあくなき研究を重ね、古代文字による大字書作品を通じて、本物の書を模索している。また、すべての書法の体得を熱心に実践し、他の作家の追随を許さない独自の世界観を構築し、書の普及や活動の支援、日中交流やユネスコ等海外への発信、大学教授としての後進の指導とその活動は多岐にわたり、存在感は芸術の世界にとどまることはない」。以上が、文化庁広報での高木氏の推薦理由だ。 筆者も人間・高木聖雨に惚れたひとりだが、打てば響く氏の対応の早さは爽快で、周囲の環境状況を鑑みいつも最善に近い即決ができる希有な人である。師を尊び、理路整然とした流れを好み、それが書道界の発展に必要と思えば、清濁併せ飲む男気もある。周知のとおり聖雨氏は、文化勲章作家(かな書)の高木聖鶴氏のご子息であるが、「かな」の道を選ばず「漢字」の世界を目指した。「反骨心に似た感情」からとお聞きするが、いろいろとエピソードがあるようだ。その一端が小社刊『昭和二桁世代・現代書家の素顔―田宮文平著』にも記されている。「書でもやろうか」事件だ。〈でも〉とは何事かと父は激怒した。が、父はしっかりと師を選ぶことを条件に上京を許し、大東文化大学に入学。そして父と同じく人生の師を決めた。敬愛する青山杉雨の元での厳しい修行が始まったのである。その後の聖雨氏の活躍は万人の知るところであろう。 今、筆者は大きな期待を抱いている。藝術院会員は今更言うまでもなくその道の権威を自らの言動の中に有する。従って権力の集中がおこらない程度の人数が必要であり、常にオープンスタンスで書道界全体を見据える組織であって欲しいと思う。紹介作品「黎明」は聖雨氏の新たな決意を示していると感じられる。(松)黎 明(第82回謙慎書道会展出品作)
-昭和36年以降の1名増員(4名体制)- 期待膨らむオープンスタンス 令和2年度 日本藝術院新会員(書)
12月号にもふれたが、昭和36年以来の藝術院会員(美術)定員枠の変更がなされ、ここ10年間空席の増加が続いている日本画の定員数を2名減じて工芸と書に各1名振り分けた。特に書部門は、折にふれて真偽不明の増員の問題が取りざたされ、立ち消えてきたが、書壇の殆どが望む増員が1名ではあるがやっと実現した。今回の補充選挙に、初挑戦で新会員を決めた謙慎書道会理事長・高木聖雨。関東の碑学派の雄、謙慎書道会所属の藝術院会員(小林斗あん氏)が逝去された2007年から、13年目の復活となった。
「氏は、長年の深い思索とあくなき研究を重ね、古代文字による大字書作品を通じて、本物の書を模索している。また、すべての書法の体得を熱心に実践し、他の作家の追随を許さない独自の世界観を構築し、書の普及や活動の支援、日中交流やユネスコ等海外への発信、大学教授としての後進の指導とその活動は多岐にわたり、存在感は芸術の世界にとどまることはない」。以上が、文化庁広報での高木氏の推薦理由だ。
筆者も人間・高木聖雨に惚れたひとりだが、打てば響く氏の対応の早さは爽快で、周囲の環境状況を鑑みいつも最善に近い即決ができる希有な人である。師を尊び、理路整然とした流れを好み、それが書道界の発展に必要と思えば、清濁併せ飲む男気もある。周知のとおり聖雨氏は、文化勲章作家(かな書)の高木聖鶴氏のご子息であるが、「かな」の道を選ばず「漢字」の世界を目指した。「反骨心に似た感情」からとお聞きするが、いろいろとエピソードがあるようだ。その一端が小社刊『昭和二桁世代・現代書家の素顔―田宮文平著』にも記されている。「書でもやろうか」事件だ。〈でも〉とは何事かと父は激怒した。が、父はしっかりと師を選ぶことを条件に上京を許し、大東文化大学に入学。そして父と同じく人生の師を決めた。敬愛する青山杉雨の元での厳しい修行が始まったのである。その後の聖雨氏の活躍は万人の知るところであろう。
今、筆者は大きな期待を抱いている。藝術院会員は今更言うまでもなくその道の権威を自らの言動の中に有する。従って権力の集中がおこらない程度の人数が必要であり、常にオープンスタンスで書道界全体を見据える組織であって欲しいと思う。紹介作品「黎明」は聖雨氏の新たな決意を示していると感じられる。(松)
黎 明(第82回謙慎書道会展出品作)