―2022 伝統と創意―第76回日本書芸院展が開催され、記念講演会開催前の役員挨拶で新理事長に就任された土橋靖子さんが初めて公開の場に立たれた。実にしっかりとした言葉で話され、役職に対する真摯な気持ちが伝わった。日本書芸院は、戦後1年後の昭和21年11月に辻元史邑氏の尽力により創設され、初代理事長に就任、以降「伝統と創造」の理念のもと2代炭山南木から安東聖空、田中塊堂、村上三島、宮本竹逕、梅舒適、杉岡華邨、古谷蒼韻、伊藤鳳雲、今井凌雪、尾崎邑鵬、栗原蘆水、井茂圭洞、杭迫柏樹、吉川蕉仙、黒田賢一、真神巍堂と継投され、そして初めての女性理事長として19代に土橋靖子さんが選出された。土橋さんは、1998年・2度目の日展特選の5年後、現代書道二十人展のメンバーに抜擢され、2007年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞し同年に日展審査員。2008年「良寛春秋」で日展会員賞。2016年「墨染」で日展内閣総理大臣賞。2018年「かつしかの里」で日本芸術院賞を受賞した。現在日展監事、読売書法会常任総務等で活躍。今年、書道団体・蛙園会を創設した。さて、今展の出品作品に眼を移そう。選文は万葉集から、養老七年癸亥の夏、吉野の離宮に幸しし時に「笠朝新金村(かさのあそみかなむら)の作れる歌一首「瀧のうえの御舟(みふね)の山に瑞枝(みづえ)さし 繁(しじ)に生(お)ひたる栂の樹の いやつぎつぎに 万代(よろづよ)に かくし知らさむ み吉野の 蜻蛉(あきづ)の宮は 神柄(かむから)か 見が欲しからむ 山川を 清(きよ)み清(さや)けみ うべし神代ゆ定めけらしも」 行幸の折の土地誉め儀礼歌。いつもの土橋さんのイメージと何か違う。書出しの微妙な小字の揺れがある一群と7行目からの展開部、16行目からの最終部、夫々の末尾が1文字、2文字、1文字の散らし書きで締められている。これまでもこの手法は比較的多く見られたが、群としての組み合せを考えた時、例えば少し行の様子を変えるだけで1・2群の組み、2・3群の組み、1・3群での返し書きも考えられる。このように思えることこそ、各群のもつ一種の纏まりの重要性を示唆しているように思える。温故知新での「和の書」の創造と新しい書表現を追求していただきたい。(松)蜻蛉の宮(万葉集) 90×236cm
―2022 伝統と創意―
第76回日本書芸院展が開催され、記念講演会開催前の役員挨拶で新理事長に就任された土橋靖子さんが初めて公開の場に立たれた。実にしっかりとした言葉で話され、役職に対する真摯な気持ちが伝わった。
日本書芸院は、戦後1年後の昭和21年11月に辻元史邑氏の尽力により創設され、初代理事長に就任、以降「伝統と創造」の理念のもと2代炭山南木から安東聖空、田中塊堂、村上三島、宮本竹逕、梅舒適、杉岡華邨、古谷蒼韻、伊藤鳳雲、今井凌雪、尾崎邑鵬、栗原蘆水、井茂圭洞、杭迫柏樹、吉川蕉仙、黒田賢一、真神巍堂と継投され、そして初めての女性理事長として19代に土橋靖子さんが選出された。
土橋さんは、1998年・2度目の日展特選の5年後、現代書道二十人展のメンバーに抜擢され、2007年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞し同年に日展審査員。2008年「良寛春秋」で日展会員賞。2016年「墨染」で日展内閣総理大臣賞。2018年「かつしかの里」で日本芸術院賞を受賞した。現在日展監事、読売書法会常任総務等で活躍。今年、書道団体・蛙園会を創設した。
さて、今展の出品作品に眼を移そう。選文は万葉集から、養老七年癸亥の夏、吉野の離宮に幸しし時に「笠朝新金村(かさのあそみかなむら)の作れる歌一首「瀧のうえの御舟(みふね)の山に瑞枝(みづえ)さし 繁(しじ)に生(お)ひたる栂の樹の いやつぎつぎに 万代(よろづよ)に かくし知らさむ み吉野の 蜻蛉(あきづ)の宮は 神柄(かむから)か 見が欲しからむ 山川を 清(きよ)み清(さや)けみ うべし神代ゆ定めけらしも」 行幸の折の土地誉め儀礼歌。
いつもの土橋さんのイメージと何か違う。書出しの微妙な小字の揺れがある一群と7行目からの展開部、16行目からの最終部、夫々の末尾が1文字、2文字、1文字の散らし書きで締められている。これまでもこの手法は比較的多く見られたが、群としての組み合せを考えた時、例えば少し行の様子を変えるだけで1・2群の組み、2・3群の組み、1・3群での返し書きも考えられる。このように思えることこそ、各群のもつ一種の纏まりの重要性を示唆しているように思える。温故知新での「和の書」の創造と新しい書表現を追求していただきたい。(松)
蜻蛉の宮(万葉集) 90×236cm