日本藝術院会員就任記念● 5月25日~30日● 山陽百貨店 本館6階 催し会場日本藝術院会員・正筆会会長の黒田賢一氏が本格的な大個展を開催したのは5年前。東京・日本橋高島屋での古稀記念であった。平成13年、戦後生まれで初の現代書道二十人展入りを果たし、日展会員賞、内閣総理大臣賞、そして平成23年に日本藝術院賞を受賞し、正に飛ぶ鳥を落とす勢いで書壇を駆け上がった。が、病魔が氏を襲う。1年間に及ぶ闘病生活、人生最大の試練に遭うも氏は復活を果たした。その後から黒田作品に大きな変化が生まれてきたのは周知のとおり、線情の変化である。大作の厳しくくい込む強い線も健在だが、特に中、小品に深い情感が内包されるようになった。その、変化の全容が今回の郷里・姫路での日本藝術院会員就任記念展で明らかになったように思える。さて、今記念展の作品から「伊勢の海や霞をそめていづる日の 潮瀬ににほふ春の曙」〈清水浜臣〉「石ばしる垂水の上のさ蕨の 萌えいづる春になりにけるかも」〈万葉集 志貴皇子〉の2作品が伊勢神宮に、「日は入りて月まだいでぬ黄昏に 掲げて照らす法のともし火」〈書写山圓教寺創建 性空上人〉の調和体作品が圓教寺に夫々奉納される。また、紹介の二曲屏風「道元禅師の歌」は、新たに成田山書道美術館に寄贈される。本作は、やや細ぶりの筆を用いた鋭い直筆の線と微妙に異なる渇筆の線情、更に吊上げた遊びの細線が心地よく呼応しながら歌意がふっと観者の心に落ちてくる。そんな趣きがある。また、中~小品のなかから代表して、芭蕉「つき鐘も」を挙げた。鐘の音に応えるかのような初秋のツクツクボウシの声が聞こえ来る、何ともいえない静寂感が漂う。この線質変化の妙味は生き死にの経験に加え、筆にあるのかもしれない。試行錯誤のすえ、黒田賢一の呼吸・息に沿う自分用の筆、弘法は筆を選ぶのだ。(松)
日本藝術院会員就任記念
● 5月25日~30日
● 山陽百貨店 本館6階 催し会場
日本藝術院会員・正筆会会長の黒田賢一氏が本格的な大個展を開催したのは5年前。東京・日本橋高島屋での古稀記念であった。平成13年、戦後生まれで初の現代書道二十人展入りを果たし、日展会員賞、内閣総理大臣賞、そして平成23年に日本藝術院賞を受賞し、正に飛ぶ鳥を落とす勢いで書壇を駆け上がった。が、病魔が氏を襲う。1年間に及ぶ闘病生活、人生最大の試練に遭うも氏は復活を果たした。その後から黒田作品に大きな変化が生まれてきたのは周知のとおり、線情の変化である。大作の厳しくくい込む強い線も健在だが、特に中、小品に深い情感が内包されるようになった。その、変化の全容が今回の郷里・姫路での日本藝術院会員就任記念展で明らかになったように思える。
さて、今記念展の作品から「伊勢の海や霞をそめていづる日の 潮瀬ににほふ春の曙」〈清水浜臣〉「石ばしる垂水の上のさ蕨の 萌えいづる春になりにけるかも」〈万葉集 志貴皇子〉の2作品が伊勢神宮に、「日は入りて月まだいでぬ黄昏に 掲げて照らす法のともし火」〈書写山圓教寺創建 性空上人〉の調和体作品が圓教寺に夫々奉納される。また、紹介の二曲屏風「道元禅師の歌」は、新たに成田山書道美術館に寄贈される。本作は、やや細ぶりの筆を用いた鋭い直筆の線と微妙に異なる渇筆の線情、更に吊上げた遊びの細線が心地よく呼応しながら歌意がふっと観者の心に落ちてくる。そんな趣きがある。また、中~小品のなかから代表して、芭蕉「つき鐘も」を挙げた。鐘の音に応えるかのような初秋のツクツクボウシの声が聞こえ来る、何ともいえない静寂感が漂う。
この線質変化の妙味は生き死にの経験に加え、筆にあるのかもしれない。試行錯誤のすえ、黒田賢一の呼吸・息に沿う自分用の筆、弘法は筆を選ぶのだ。(松)