全日本美術 ALL JAPAN ARTS
Menu
Work No.53

新しき年の始に…

第73回日本書芸院展(2019.07)
画像をクリックすると拡大表示されます

~余白に膨らみを持たせた線条へ~

第73回日本書芸院展より、黒田賢一理事長「新らしき年」をピックアップさせて頂く。この歌は、万葉集(巻19・4284)道祖王(ふなどのおおきみ)の歌。万葉集にはこの1首だけが収められている。
書芸院展初日の講演会で講師の奈良大教授・上野誠氏より、新元号が万葉集の歌から引用されたことを受け、黒田理事長に「万葉集」から元号が決まると予想されていたのですね、凄いですね、と些か無茶振り(冗談)されていたことを思い出す。出典の「梅花の歌」は天平2年(730年)に太宰府の長官として赴任していた大伴旅人邸で1月13日に開かれた宴で詠まれた32首のひとつ。道祖王の歌は、天平勝宝5年(754年)の正月で約四半世紀後である。歌意は「新年のはじめに、気の合うもの同士が集まっているのは、なんとうれしいことだろうか。」実に素直でストレートな表現である。黒田氏はこの素直さに魅かれて選文されたのであろう。
作品に目を移そう。3尺×8尺の紙に横8行で書き下した作品である。どちらかと言えば、前半の行の運びは淡々と自分の呼吸リズムで進み、継墨して中央部4~5行を潤墨で展開、6、7行を狭く散らせて最終を潤墨で締めたが、中央部の受けには軽く、落款部でニ重に受けて調和を図った。
黒田氏の作品制作のポイントは余白と墨の黒との対比にある。いつもは鋭い書線のキレを先ず感じるのだが、今作は余白に膨らみが感じられて悠揚な広がりがある。最近淡墨作品も手がけて表現の幅が深くなってきた。
平成23年の日本藝術院賞受賞から8年、突然襲った病魔にも打ち勝った。更なる高みへと昇る兆しが見えつつある。(松)

新しき年の始に思ふどちい群れて居れば嬉しくもあるか(万葉集)90×240cm

← 黒田 賢一の作品一覧へ戻る
新しき年の始に… — 黒田賢一