樋口一葉「にごりえ」より● 10月22日~28日 ● 船橋/滝不動・スタジオM 毎秋の個展開催は43回目。長岡美和子さんの活動意欲はますます盛んだ。2008年の第25回展からは近代文学に目を向け、その読書から得られたモチーフを一字の材にして、長岡美和子の「墨象」作品として発表してきた。今回は樋口一葉「にごりえ」だ。下町の男女の濃密な人間模様が描かれた短編小説。長岡さんは「話言葉でリズミカルな下町の人々の声が聞こえる様でした」と言う。更に「生活の匂いがする話」とも。読後から選ばれた題材は25字。「纏(まとい)」や「櫃(おひつ)」、「厭(いやになる)」など書材としてはあまり目にしないものばかりで、却って面白い。その中から特に注目した2点を挙げた。まずは「擔(かつぐ)」だ。この作は今展の代表作と思える。手偏の垂直の縦画が芯棒になって、他の全ての線を受け止め、揺るぎない象を確立。加えて多種の線条、鋒の働きによる墨色変化も見事だ。「俯(うつむく)」は何といっても人偏の鋒の開きが凄まじい。落筆時の気魄の表れか。庶民の情話を背景に生まれた長岡さん独自の世界がある。 全日本美術協会理事(篠原)
樋口一葉「にごりえ」より
● 10月22日~28日 ● 船橋/滝不動・スタジオM
毎秋の個展開催は43回目。長岡美和子さんの活動意欲はますます盛んだ。2008年の第25回展からは近代文学に目を向け、その読書から得られたモチーフを一字の材にして、長岡美和子の「墨象」作品として発表してきた。今回は樋口一葉「にごりえ」だ。下町の男女の濃密な人間模様が描かれた短編小説。長岡さんは「話言葉でリズミカルな下町の人々の声が聞こえる様でした」と言う。更に「生活の匂いがする話」とも。読後から選ばれた題材は25字。「纏(まとい)」や「櫃(おひつ)」、「厭(いやになる)」など書材としてはあまり目にしないものばかりで、却って面白い。その中から特に注目した2点を挙げた。まずは「擔(かつぐ)」だ。この作は今展の代表作と思える。手偏の垂直の縦画が芯棒になって、他の全ての線を受け止め、揺るぎない象を確立。加えて多種の線条、鋒の働きによる墨色変化も見事だ。「俯(うつむく)」は何といっても人偏の鋒の開きが凄まじい。落筆時の気魄の表れか。庶民の情話を背景に生まれた長岡さん独自の世界がある。
全日本美術協会理事(篠原)