坂口安吾「堕落論」、「続堕落論」より● 10月25日~31日 ● 滝不動スタジオM 書の題材を文学作品から取ろうと思ったのは、16年前からだという。 昨年は谷崎潤一郎「陰翳礼賛」、一昨年は三浦朱門「冥府山水図」より作意を受けている。これは、文字の結体が織りなす平面芸術としての書線の面白さにだけに主眼を置かず、文字と言葉、その奥にある自身が感受した真意を「書」として表現したいと思ったからに他ならない。今回は坂口安吾の「堕落論」「続堕落論」に焦点をあて、作品を制作。「呪」「嘘」「戦」など半切20点の主題墨象作品に全紙の墨象「愛」が加わった。「堕落論」は、敗戦直後の人々に明日へ踏み出すための指標を示した作品であり、何かに寄りかかって救われることはなく、堕落は人間の本性だと説く。限りなく堕落する中に自分自身を発見すると、逆説的に救いの道を示唆する。最後の墨象「愛」は、長岡さんが出した「堕落論」への答えではなかろうか。善悪を超越した生きとし生ける者への「愛」である。大きな余白空間に浮かぶ愛、渇筆だが、その筆路は伸びやかで骨格を保ち、筆線の呼吸が聞こえる。居合い道8段の呼吸法も大いに生かされている。 他、3点の海外出品のかな作品、3点の日本画作品、スケッチ80枚も展示された。爽快な富士を挙げる。コロナ禍の中、意欲的で趣きある展示だった。(松)
坂口安吾「堕落論」、「続堕落論」より
● 10月25日~31日 ● 滝不動スタジオM
書の題材を文学作品から取ろうと思ったのは、16年前からだという。
昨年は谷崎潤一郎「陰翳礼賛」、一昨年は三浦朱門「冥府山水図」より作意を受けている。これは、文字の結体が織りなす平面芸術としての書線の面白さにだけに主眼を置かず、文字と言葉、その奥にある自身が感受した真意を「書」として表現したいと思ったからに他ならない。今回は坂口安吾の「堕落論」「続堕落論」に焦点をあて、作品を制作。「呪」「嘘」「戦」など半切20点の主題墨象作品に全紙の墨象「愛」が加わった。「堕落論」は、敗戦直後の人々に明日へ踏み出すための指標を示した作品であり、何かに寄りかかって救われることはなく、堕落は人間の本性だと説く。限りなく堕落する中に自分自身を発見すると、逆説的に救いの道を示唆する。最後の墨象「愛」は、長岡さんが出した「堕落論」への答えではなかろうか。善悪を超越した生きとし生ける者への「愛」である。大きな余白空間に浮かぶ愛、渇筆だが、その筆路は伸びやかで骨格を保ち、筆線の呼吸が聞こえる。居合い道8段の呼吸法も大いに生かされている。
他、3点の海外出品のかな作品、3点の日本画作品、スケッチ80枚も展示された。爽快な富士を挙げる。コロナ禍の中、意欲的で趣きある展示だった。(松)