第38回日彫展より
日本芸術院会員・日彫展理事長
川崎 普照
ー人体の自然の美しさをー
川崎普照先生の作品のキーワードは〈自然〉である。
「自然の造形の美しさ偉大さ不思議さを学ぶことが彫刻の基礎の一つであると思っております。人体はこの世の中で最も複雑で微妙で特に若い女の体は美しい。」
「現代生活の中で無条件に安らぎ感じる自然の美しさを、素直に感じる事を心しています。人体の自然の美しさを借りて彫刻としての本質を根ざしたものをと考えて制作しております。」
「複雑な森羅万象、今の社会は私たちに合理化・システム化された生活を促しているかのようです。そんな中でこそ自然の織り成す造形の見事さには感動致します。」(以上、いずれも『日展アートガイド』より抜萃)
常に川崎先生の口をついて出るのは〈自然〉であり〈自然に学ぶ〉である。
掲出の「爽風」は、みずから理事長・審査員長の重責を務める日彫展の今年の38回展出品作である。
自然界でもっとも美しい若い女体をモティフに、足を交叉させただけのごく自然な立ち姿である。
両腕を体側に下げ、正面を向いた顔からは特別な感情は伺われない。しかし、このわずかな静かな動き全体の中に、温かで素直な心情の揺れ、それは若い女の憂い・寂しさ・想いなどが感じられてくる。そしてその感情は観る側の人の心の映しとなっている。それほどに大きな内面を内包した存在となっているのではなかろうか。
慌しい日々の生活の中でともすれば見落としがちなおのれの心が、何気なく立つ若い女の彫像に見えてくる、そんな力を秘めて見せない魅力がある。
(中野)
