矢萩春恵 展
「 ま・な・ざ・し」
Calligraphy by Shunkei Yahagi


● 9月29日〜10月10日
● セイコーハウス銀座ホール

 

 日本で一番華やぎのある場所、銀座四丁目交差点。その角に長い歴史を背に立つセイコーハウス(旧和光本館)ショーウインドーがある。往来の人々の目に必ずとまる最高の見せ場である。このコーナーウインドーに書が飾られるのは久しぶりのこと。思わず見入った。そして何度も往復してみた。近くに、遠くに。そこにあったのは紛れもなく矢萩春恵の書であった。上掲の「華」「楽楽」を左右に、中央には「男と女」と題された、一字書12点の貼り混ぜによる二曲半双屏風が置かれている。やはりこの場所には書がよく似合う。しかも視覚に訴える現代書ならば尚更のことだ。旧和光ホールの取材に出向く度に思っていた。なぜ通りの鑑賞に拘らないのか。或は諸事情で使わせてもらえないのか。そんな鬱憤が一気に晴れたような気になった。矢萩春恵という作家、書壇での立ち位置は2面プロフィールに記したので参照されたいが、実はこの人にとっての土俵はもっと広いところにある。書の芸術性をいかに多方面に拡散するか。真の意味での現代性の発信に努めてきた個人の功績は、かなり大きいと思う。その一つに多くの個展履歴が挙げられる。昭和49年の大丸百貨店東京店での初個展以来、東急本店や上野の森美術館、香港、パリでの海外展、京都高島屋、沖縄三越、大阪そごうなどと立て続けに開催。同62年には銀座和光で「書とブロンズのある風景」を開催し、一連の和光個展が始まる。平成8年「書、そしてシェイクスピア」14年「書、そして忠臣蔵」19年「書、そして西太后」25年「お・ん・な」29年「お・と・こ・ぎ」と続いた。何れも異分野の素材を取り上げ、春恵の書にマッチングさせたセンスは高く評価された。そして今回は集大成ともいえる「ま・な・ざ・し」の51点。今回展で特に注目したのは、横作品全てが左書きになっていること。現代生活の横書きに書も合わせることによって、より親しみも増すと言わんばかりの徹底だ。時代の求めに応じた作家像の象徴を見た。(篠原)

 

 

華   Flower 〈1250×995〉

楽楽  Easily   〈700×1295〉