室井玄聳 書展
想いを紡ぐ・ことば
● 7月21日〜31日
● セイコーハウス銀座ホール
書家室井玄聳の書とは、これまでに毎日展や創玄展をはじめ、いろいろの壁面で対峙してきた。そしてその強靱な線条に思わず息を飲む場面もたびたびあった。多くを語ったことはないが、時折交わす挨拶の佇まいが実に紳士で、それだけで優しい人柄を察することができた。強靱な表現力と柔かな人物像、この両極を知るとおそらく誰もがファンとなるような気がする。そんな室井玄聳の初個展が銀座のど真ん中で開催された。和光ホールから改名したセイコーハウス銀座ホールに約70点を展覧。初日から大勢の展観者が詰めかけている現場を見ただけでも、この書家の人気ぶりが窺える。やはり書と人の両極の魅力が他者を動かすのだろう。
さて作品について触れるが、正直どの作を上掲するか迷った。というのも副題にある「想いを紡ぐ・ことば」がどの紙面にも満たされ、書表現によってまるで玄聳自身の心の声を聞くようで、その中から1点、2点を選ぶ作あった。そんな中、やはり掲出せざるを得なかったのが「仏仏不言」である。この作は人間室井玄聳そのもののように思われる。駒澤大学出身の玄聳にとって、禅語は人生の道標ともなっているのだろうか。師東地滄崖譲りの鋭い太細の直線が横たわる。「ぶつぶついわず」誰もがそう思いたい。そして実行したい。玄聳の人となりと重なる。もう1点は旧友山崎明子氏の句「冬銀河…」を挙げた。この書には多様な要素が含まれている。強さはもちろんのこと、明度の高さ、そこから見えてくる多彩な用筆美、更には句意表出の余白美など、見れば見るほどその文学と書の融合に感嘆する。昔はよく「書は文学に隷属せず」の主張を聞いたものだが、書の本質は決してそんなところにはない。むしろ文学を読み解き、噛み砕き、自家薬籠中にするからこそ、そこに想いを紡ぐことができるし、書表現者としての役割を果たせるのではないか。「言葉の情景」は文学を知る者にしか表れないことを、この作品は暗示しているように思えてならない。[むろい・げんしょう]毎日書道会理事/全日本書道連盟常務理事/創玄書道会会長/日本詩文書作家協会理事長
(篠原))
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冬銀河 人は誰もが星になる (山崎明子) 〈930×1280〉
仏仏不言(ぶつぶついわず) 〈1144×527〉
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