松本宜響書道展


●9月16日〜18日
● 宇都宮/栃木県綜合文化センター2F 第4ギャラリー

 

 思えば前回の個展は2020年の2月、世の中はコロナ禍到来に右往左往しだした頃。しかし松本宜響は鳩居堂個展を決行。当然会場は閑散としていたが、その分作品をじっくり鑑賞できたし何より人間宜響を知る大切な時間ともなった。その後、世は自粛の嵐。何もかもが止まってしまった。この年の5月号1面に前回展を紹介したが、通常の半分8面組での発刊。宜響の悔しい思いは今回展に引き継がれている。90点の出品の一部は前回鳩居堂展出品作。地元宇都宮の人々にも見てもらいたい思いもそうさせたという。さて今回展は会場の広さもあって大掛かりな個展となった。宜響の現在が全て詰まっているともいえるだろう。「佛語・箴言・和歌・味わいの深い詩文・文字」などに加えて自詠漢詩の数々。壁面を一巡すると、住職でもある宜響がいかに自分を楽しみ、人を楽しませるかを実行している姿が伝わってくる。掲載の屏風作がそれを物語っているではないか。全体を俯瞰するだけでも心が弾む。一方、「道・心」や「孤燈一穂愛閑居」に見る本格の書表現には唸るような感性の高さがある。そして特筆したいのが愛犬「光」との別れを三幅に残した作。内覧会で涙ながらに制作動機を話す宜響の姿が忘れられない。金文の「光」が淡墨に浮かび、左右の隷書二句によって送り出されるさま。宜響の優しい心が横溢する。 
 毎日書道展審査会員/貞香会参与  (篠原)

孤燈一穂愛閑居

 

 


愛犬「光」との別れ

(右から)龍象帰門/螺聲一響幽禽伴…他六紙

心                道