稲村龍谷 篆刻展
篆刻家・稲村龍谷の作品を繁茂に、詳細に拝見する機会を持ったのはここ10数年来のことで、筆者自身が方寸の世界の大きさ、深さを書の世界の縮図と感じだして、そういった眼で篆刻作品を、また書作品を鑑賞しはじめてからになる。親交いただいている中村雲龍氏の落款の多くが龍谷印ということと、筆者と同年齢という気軽さもあり、龍谷氏の思慮と感情豊かな芸術観にも興味をいだいていた。初めての個展、それも古稀という節目での開催は、今までの仕事の総決算という気持ちと、漢字、前衛書家の尊父・稲村雲洞の仕事との対比を改めて考えさせられたに相違あるまい。会場には所狭しと膨大な印譜と選別された実刻印面が展示されていた。日展特選「攝意歸空」「道在瓦甓」の2作品、毎日書道展文部科学大臣賞「官馬相蹈・言中有響」はもちろん彼の自分史に残る作品だが、これまで多く紹介されているので、あえて展観して印象に残った作品を挙げた。印のひとつひとつに刻する作者の思いの質が異なっていると思えるからだ。どの印も自分の心の表現であり、言葉と文字の連関する意味合い、それを感受する作家のイメージは様々に変化する。同字句を異なる印面として刻する必然がそこに生まれるからだ。 |
入其俗従其俗印譜
入其俗従其俗印面
看脚下印譜
看脚下印面
賢士尚志印譜
賢士尚志印面
能藏拙印譜
能藏拙印面
幽意閑情印譜
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