赤平泰処書 展
―書の美を求めてー


● 9月27日〜10月2日
● 東京銀座画廊・美術館7F展

 

 貞香会会長赤平泰処が古稀記念も兼ねて7回目の個展を開催した。東京銀座画廊美術館7階全フロアに83点の展観。圧巻は横19メートルに余る篆書般若心経だ。1行5字の53行に落款が入る。掲載は紙面の都合で小さくなったが、数字から実作を想像してほしい。これだけの長さの紙面を筆意一貫、集中持続させる気力に相当の気概を窺う。赤平の近年の発表作は篆隷に拠るところが多かったが、今展では行草にも積極的に取り組む。その代表作が「陶淵明・飲酒其の五」だろう。これも二八尺10連の大作。何と言っても渇部の凄まじい筆勢に魅了される。開いた鋒を一気に走らせ、停止し、旋回する。中盤の「悠然見南山」がその象徴の行。片や臨済録からの選文「松老雲閑曠然自適」においては墨量豊かに潤部重視の重厚感を見せる。加工紙の柄が濃墨に浮き出たところも、テーマ「安楽な境地」を誘うかのごとし。屏風「深蔵若虚」も加工紙柄が一段と墨に透け、黄土の紙色とともに深い紙面を作る。「深くしまいこんで 何もないように見える」赤平泰処の人生訓のように思えるが、蔵字の渇部の激しさ、直情のさまは赤平の心奥に宿る強固な意志の表れと捉えた。「遍照」大字二字の線の迫力。漲る筆力。照字烈火に見る唸るような息吹の表出。実作を眼前に感嘆するのみだ。「夏目漱石・春興」は数少ない楷書の一作。六朝風を踏襲する中でも鋭利な横画の筆法が冴え、野趣よりも時代の知性が紙面に溢れる。「独創」、「無礙光」は現在の赤平泰処の真骨頂だろう。またこの二作には赤平の信念を見る。「一本の道」は他に委ねることなく、表現者自身が切り開く。活力に満ちた線の構築に、見る者の心も洗われる。
 毎日書道会総務/全書連評議員/貞香会会長/西蓮会主宰(篠原)

 

 

独 創(240×90cm)

遍 照(180×280cm)

深蔵若虚〈屏風〉(136×70cm×2)

松老雲閑曠然自適( 136 ×70cm×4)

陶淵明・飲酒其の五(240×56cm×10)

夏目漱石・春興(176×56cm×6)

無礙光(70×180cm)

摩訶般若波羅蜜多心経(175×70cm×27)