日展会員、藝術院賞・恩賜賞の書家・池田桂鳳氏が〈初心にかえって〉と題した卒寿記念の書展を開催された。会場は風格ある有形文化財のギャラリー、京育ちの作家らしい粋な選定である。案内は極力控えたとお聞きしていたが、隠れファンがこぞって来場したような盛況となった。屏風作品を含む20数点より注目の3点を挙げた。
桂鳳作品の魅力は、水穂会の中でも一線を画する自風の味わいを持つ。その風趣は、放ち書きの書線と空間の響きあいに凝縮される。お茶の世界の侘び寂びに通じる世界だ。その本質をつく氏の言葉がある。「作意がむき出しの作品は下品になる。作意を柔らかに包み込み、そして時々の心を素直に折り込むことが出来ればと願って制作にとりくんでいます」と。
今展は「池田桂鳳」という書家としての生き様、覚悟が充分に窺える書展となった。6歳で日比野五鳳に就いて書を学び始めた頃、五鳳師自身もまだ京都で教職にあり、五鳳伝説の歴史とともに歩み、書を学び続けた希有な書家の内情をも明らかにされた。家としての交流の深さだ。若い頃はスキー、登山、ゴルフ他かなり自由気質でヤンチャな面もあったようだが、いつしか書に対する凄みは内に秘め、静かに燃え続けて現在の池田桂鳳がある、改めてそう思う。
この度の書展で所蔵の五鳳師作品、お手本の多くが展観された。自由に写真撮影も出来る。師のお手本を多くの書家と共有することで書学への灯火となるという深い思いの具現であろう。(松)

永受嘉福
