傘寿記念
江口大象
―書のあゆみ― 展
● 4月9日〜12日
● 兵庫県立美術館王子分館
原田の森ギャラリー
16歳から80歳までの回顧作、新作を集成しての傘寿記念展で、さながら第二次大戦後の書の変遷を垣間見るような企画展であった。これを記念して編集された作品集『江口大象―書のあゆみ―』には、何と千点近くの作が集録されているから、さながらカタログ・レゾネの観があった。
16歳の王羲之初月帖の臨書は手島右卿風。17歳頃の王維詩竹里館は津金かく仙スタイル。昭和20年代のこの二人のスーパー・スターへの熱狂振りが伝わってくる。それが、17歳で佐賀県展第一席となる高青邱詩牀屏山水圖歌は、何と小坂奇石調である。右卿、?仙の書にはファッション性があるからともかく高校生に小坂奇石が分ったというのは不思議なくらいである。しかし、それが生涯の縁となる。東京学芸大学にすすんでの卒業制作の韓愈詩は、堂々と奇石調を熟している。当時、揚石舒雁、大渓洗耳と共に三羽烏と言われた。
24歳で李賀詩で日展初入選。40歳から50歳にかけては王鐸等も消化して絶好調であるが、なぜか、日展特選には恵まれない。59歳、62歳の特選作は、どこか畏縮して江口大象らしくない。
しかし、ここを通過してからは本領を発揮して超大作の書ける璞社書展を中心に臨争座位稿(第41回)、氣和(第42回)、飲中八仙歌(第44回)、臨斐将軍詩(第46回)、高青邱詩(第50回)等々、怒涛の制作がつづく。
そして、新作の融通無礎等の一連の奉納の書。すでに技量でなく、〈祈り〉であろうか。(田宮文平)

李賀詩「崇義裏滞雨」
第2回日展(初入選) S 34 年 24歳

白居易詩「中秋月」 第29回日展(特選) H9年 62歳

高青邱詩 第50回記念 璞社書展 H22年 75歳
