貴方へおくる応援歌

第32回 田中穂積 作品展(書画陶他)

■ 5月18日〜23日  ■ 西宮市 ギャラリーアライ

 田中穂積氏とはじめてお会いしたのは、私が神戸全美を引継いで2年目(18年前)の頃である。ふらっと立ち寄った書展、話すうちにそのピュアーな芸術観に引込まれてしまった。氏の利き手が、数年前から頚椎損傷で全く動かなくなったとその時お聞きした。書家で腕が動かせなければ、これは致命傷である。しかし、氏はそうは考えなかった。左があるではないかと、筆を持ち替えて稽古を重ねた。日毎に文字が変わっていく、その新鮮さに氏自身が感動を覚えたという。左書きの作品を私も驚きをもって見入ったことを今でも覚えている。また、「因があれば果は必ずある。分不相応な経済要求は芸術を駆逐する」とした氏の哲学は20年を経た現在でも一貫して、個展主義を続けている。
 今回で32回展を数えたが、頚椎損傷は更に悪化し痛み止めを使用しながらの制作がここ10年続いているという。蘊蓄の深さと哲学的思考が見るものに何かを感じさせる田中穂積作品展、今回は「貴方へおくる応援歌」をテーマとした作品(絵画、陶芸含む)群が並んだが、その中の1点を挙げた。謙虚・恥心、心の奥に深く刻んでおかなければならない言葉である。       (松)

 

  

  不求名利 (佐藤一斎 言志録より)