師古妙創―師村妙石六六篆刻書法展


【大連展】
● 2015年6月5日〜19日
● 大連現代博物館

【烟台展】
● 2015年7月15日〜20日
● 烟台美術博物館

 

 日展会員、九州の篆刻家師村妙石氏が今年6月から7月にかけて、大連現代博物館と烟台美術博物館の2ヶ所で「六六篆刻書法展」を開催、大反響を得た。
 師村氏は、日中正常化の直後からこれまで180回に及ぶ訪中を重ねており、現在西?印社の名誉会員でもある。日本の篆刻界の偏り(東高西低)の影響を多大に受けて、その頃より篆刻の新しい展開を模索、日本国内ではなくアメリカで「THE TENKOKU」として現代アートの展示を実施した。その方向性の是非云々は日本では多々あるも、巨大な印、立体的展示など、正に斬新でこれまでの篆刻表現と趣を異にするものであった。今回の報告記事・展示模様を紹介させて頂く。

 


書と現代美術の革新的な融合
元福岡アジア美術館館長 安永幸一
 
 2001年にニューヨークの著名な美術評論家から「THETENKOKU」と命名された師村妙石氏の独自の革新的な書は、現在、日本のみならず、本場である中国や韓国、さらに欧米各国でも高く評価されているのは御存知の通りである。
 氏の「THE TENKOKU」は、書の伝統的な一分野である篆刻と現代美術を実に見事に融合させた全く新しい独自の表現世界である。その作品の数々を見ていると、起源が書の一部であるという事実をいつしか忘れ去ってしまい、アメリカ・ポップアートの旗手アンディ・ウオーホルを思わせる同一イメージの篆刻文字の反復が、色彩豊かに、かつ絢爛豪華に展開されて、我々をいつしかハイレベルな現代美術の世界へとひきずり込んでしまう。3000年の歴史を持ち、ともすると伝統に縛られがちな篆刻の世界に全く独自の新たな世界を構築した氏の革新性と創造性に深く感動を覚える。
 今回、「師古妙創・師村妙石六六篆刻書法展」と銘うたれ、大連現代博物館と烟台美術博物館で開催された展観は、過去の中国における数々の発表をさらに上まわる大規模な展観である。この中には、現在の中国のスローガンともいえる「中国夢・12祈望」が新たに組み込まれ、「愛心系列」は、愛と和をテーマの作品群であり、氏の芸術の新しい展開を見せている。「良渚之響系列」「文明之光系列」は、良渚文化の象形的な模様である「雲」「網」などの原始的ともいえる絶妙の形態を「ザ・テンコク」の手法で現代美術化し発展させた作品群で、従来の師村芸術が対象としてきた古代文字(篆書)からさらに一歩深く踏み込み、象形紋様の持つ原始的でシンボル性の強い形態への主題の移行である。現代美術の原点とよくいわれる原始美術にまで思いを馳せているかのような感さえある。
 会期中に訪問した中国美術館は、中国における唯一の国立近代美術館として、全国の数多くの美術館の頂点に立つが(2008年の個展の時に師村作品もこの館に2点収蔵されている)、呉為山館長から「是非、再度当館でやって下さい」と懇請されたのである。
 今展を機に、新たに何件かの展覧会のオファーが来ているとのことだが、中国における師村氏の今後の活動からますます目が離せなくなったようだ。
 いずれにしろ、今回展は1972年に国交が正常化された直後に初めて訪問して以来、これまでに180回になんなんとする中国歴訪を重ねてこられた氏の中国への憧れと想い、漢字への愛着を根源としつつ、独自の現代美術の斬新な手法を駆使して新しい時代にふさわしい書のあり方を問い続ける革新的な「THE TENKOKU」の大きな節目となった展観であった。


師古妙創
大連現代博物館館長研究員 姜 曄


 師村妙石先生は中国人民の古くからの友人で、百八十回近く中国を訪問し、様々な展覧会を開催し、中国各地に足跡を残されています。日展の審査員であり、また中国の西?印社名誉社員であります。外国の方として、西冷印社社員になるのはきわめて難しく、先生の藝術への造詣と影響力を如実に反映しています。
 師村先生は若くして有名になり、31歳で日展の特選を獲り、これは史上最年少の受賞者であります。それから、進取の精神で探求し続け、程十髪、沙孟海などの中国藝術界の巨匠と知り合いになりました。中国の伝統文化からの影響を受けると同時に、欧米の文化からも栄養を吸収しています。“東西の藝術を超え、書と画の境界を超え”、“線の中には生命が燃えさかる何かがひそんでいる”という“師村流”篆刻藝術が形成されてきました。
 師村妙石先生の篆刻作品には師古と創新の理念が貫かれています。先生は古(いにしえ)から法を取り、古璽漢印の気韻、金石の息吹が作品から見られます。古璽、漢印、瓦当、石刻、肖形印の風格が紙の上に生き生きと表現されています。静穆雄渾であふれる気魄は先生の作品の精神を形造っています。創新は師村妙石先生の篆刻藝術の魅力です。師村先生は古を師としながら、古にこだわらず題材を大胆に開拓してきました。漢字、仮名、符号、図象やローマ字などまでも印に取り入れた作品により、中国の伝統的な篆刻が新しい世界言語を持つようになりました。その上、先生はさらに表現方法を革新し、方寸の格式から跳び出し、篆刻作品の印影を数十倍から百倍以上まで拡大し、大胆に切り絵、油絵、染め、版画、石彫、陶磁などの多種の形式と材料で表現し、独特の篆刻表現をうち出しました。師村妙石先生は東方の線質と西方の色彩を融合し、“古から出て新に入る”篆刻作品を創出しました。先生の篆刻作品を見るにつけ、さわやかな風が顔に吹いてくるように感じ、心に沁み入ってきます。人々は先生の作品を通して中国の伝統文化を更に愛し、先生の藝術家としての活動により、古くからの篆刻藝術は末永く発展していくと信じてやみません。

 

 

祥和《和》  201.2×452.7cm  と師村妙石

 

良渚之響シリーズ1《雲》  158.5×264cm

 

 

呉昌碩詩句《梅花憶我我憶我》  117.1×815.5cm 部分