書と共に五十年
楢崎華祥 書作展
日展会員、臨池会副会長を務める楢崎華祥さんの書業50年を記念する書作展。これだけの書歴がありながら初個展とお聞きしたが、いかにも控えめで礼節を重んじる人という思いを深くした感がある。
楢崎さんは1944年、東京女子高等師範学校付属高等女学校専攻科国語部(現・お茶の水女子大学)を卒業しているが、同校で教鞭をとっていた尾上柴舟の書風に憧れて専攻科に進んだと云う。卒業と同時に入門し、桜蔭高等学園高等女学校で教諭として務める一方、柴舟師の書学法を真摯に学んでいる。
そんな楢崎さんに転機が訪れる。柴舟師の逝去である。同門の高弟であった杉岡華邨氏に指導を受けるようになり、日展を表舞台として発表をすることになった。和漢朗詠、高野切三種、寸松庵、中務集、一条摂政集などの古筆の深い修練に裏打ちされた経験が華邨師の指導に結びつき、1988年、93年と特選受賞、その二回目の特選受賞の年には皇太子妃雅子様の書のご進講役に選ばれるという栄誉を賜っている。そして99年には日展審査員に就任し、東のかなの代表仮名作家としての地位を不動のものとした。 さて、今展には華邨師の賛助小作品をはじめとして、屏風作品の大作を中心に約60数点がならび盛会となった。中でも西行の歌4首を四季に選別した扇面四曲屏風は繊細な用筆と巧くマッチして気品ある仕上がりであった。晶子の「いと細く」の潤渇の空間感、澄明な「手にちかく」も印象深い。
(松)