凌雲会・国書展
第37回春の小品展より

会長

津金 孝邦

 

 凌雲会・国書展春の小品展より津金孝邦会長作、石川丈山詩「野寺」を紹介する。「孤村流水傍 曲徑入僧房 脩竹重陰合 清幽到夕陽」五絶二十字に漂う清韻の気。孝邦氏の筆はその抒情に浸るかのように自然に流れ、余韻を残しながら落款部へと進む。作為などとうに捨て去り、そこにあるのは詩書合致の世界。早稲田で江戸文学を学び、長らく続く徳川の時代背景を見つめてきた孝邦氏ならではの書表現と言えよう。文学を単なる書の素材と扱い、造形や線に溺れる昨今の詩文書とは完全に一線を画しているのである。
 かつて孝邦氏は「僕は書を、感興に応じて筆をとるものであると考えています」と述べたことがある。そこには漢字や仮名、詩文といった形式は関係ないと。なるほどこの言葉は津金孝邦という作家を実に言い得て余りある。それもやはり、文学と書道は同根であるとの根本思想が言わせるのであろう。こよなく文学を愛し、一番直截な表現手段の書に訴える。この作品からも如実に窺い知る。(篠原)

 

孤村流水傍