第62回書星展より
―朴訥な筆致に宿る気韻―


顧問

浅見 錦龍

 

 書星会の第62回展より顧問の浅見錦龍氏の作品「平安」をピックアップする。
 サイズは全紙。これが腰の疲労骨折のため坐って書ける最大のものとお聞きしたが、92歳というお歳に見えない叩きつけた筆致と張りのある書線は健在で、書空間の全域に一片のゆるみも生じさせていない。それでありながら飄々、朴とした味わいを醸す線息は、70数年の書人生の集約された錦龍氏独自の世界観から滲んでくるものなのだろう。決して他人には真似の出来ない境地の作といえる。
 さて、今回何故「平安」なのか、錦龍氏の人となりを若干ながら知る者として気にかかった。日展問題の騒動を思い、個の平安にたち帰れということなのか、それとも3・11東日本大震災、原発事故、尖閣列島の日中問題、ウクライナ内戦など、世界と国政のきな臭さに対する「平安」の叫びなのか。いずれにせよ、そうした外乱に惑わされない一人の書人としての「平安」こそが大切だという書壇に対する警鐘と受けとめたい。(松)

 

「平安」