第18回晨風会展より
河野 隆 の世界
昨年末の台湾個展の折りも陳淳の臨「李白詩じゃう陽歌巻」の行草に目を奪われたが、今回も陳淳の臨書がメインとして展示されていた。
陳淳臨「岳陽樓記」全文を9紙に書したものだが、この原文は北宋の士・范仲淹(范文)が天下を論じ、憂いた名文。最後にある「天下を以て己が任となし、天下の憂いに先んじて憂え、天下の楽しみにおくれて楽しむ」は名高い。東京の「後楽園」の名称もこの一文からの由来と聞く。全文を挙げたかったが、会場写真のため通りに面した網入ガラスに阻まれ、会場内の後半部5紙を紹介した。臨書とはいえ見事な線動で氏自身のリズムがあり、見入った作品である。行書対聯のスキッとした求心力ある文字空間、お酒を楽しむ氏のウイットも窺える。柔軟な空間「萬金」も「萬金に値するもの」と篆刻の世界とを対比させている。絵画作品「紫陽花」も然り。篆刻、書作の合間の、正に精神を養う貴重な時間だ。そして、篆刻作品。特に呉竹朱白の布置と印刻の線情の趣・様に魅かれた。「四神」の側款との対比も面白い。書星会・宮負丁香氏への雅印、螺鈿手法の印矩も見応えがあった。(松)

四 神〈蒼龍・白布・朱雀・玄武〉

丁香―1

丁香―2

齊軌
