第38回選抜書道香瓔百二十人展より
〔黒髪/若山牧水〕
会 長  榎倉香邨

● 1月24日〜26日
● 兵庫県立美術館王子分館

原田の森ギャラリー展


 香瓔会会長の榎倉香邨氏といえば、若山牧水がライフワークとなり、切っても切れない思いで繋がっている。以前は与謝野晶子の歌も作品としていたが、15年ほど前から牧水に絞っての研究が始まっている。2008年の東京と神戸の第4回個展では「牧水をかく」と題して、総て牧水の歌を作品としている。「人間の奥底のどろどろとしたありのままをさらけ出すような牧水の歌にのめり込んでいくようになった。この変化は行成から西行のかな変化といえます」と語られていたことを思い出す。
 中でも22歳の時に千葉安房の根本海岸に熱愛する園田小枝子と新春を迎え、10日余り滞在している。相聞歌『安房にて』49首がそこで生まれる訳だが、まさに熱愛を直截に詠んでおり、その燃えるような感情を出し切った詩人は他にいないと香邨氏は言い切っていた。
 昨年、牧水の郷里宮崎と香邨氏のふるさと展で個展の区切りをつける予定が、俵万智さんとの出合いで牧水の「恋」の真相を見直す必要にかられた。人妻の小枝子との二人での道行きでなく、後に小枝子と再婚する男が同行していたのである。
 そうなると_歌の解釈_恋の真意が揺らぐ。香邨氏は再度詩人の心の深層にチャレンジ、今年5月26日〜30日に宮崎県美、6月に東京銀座で最終個展が開催される。今作「黒髪6首」は、その前哨作品と言えよう。  (松)

 

 

 

 

 

 

 

くちづけは永かりしかなあめつちにかえり来てまた黒髪をみる〈他5首〉