第34回選抜香瓔百十人展より

会長

榎倉 香邨

 

 榎倉香邨創設の香瓔会恒例の選抜展。関西屈指のかな団体として評価も高く、世間にかな書の在り方、方向性を問い続けてきており、弊紙も約30年に亘り展評を記させていただいてきたが、残念ながら今回は会長作品のみを紹介させて頂く。
 ここ十数年、榎倉氏は若山牧水の生き様から生まれた詩のもつ世界観に「書」の表現で如何に迫るかをライフワークとして書き続けてきている。強烈な恋愛感情、そして別れ、旅と酒。歌の底に流れる思いは日常への帰属の拒否であり、あこがれであり、人と自然を愛するが故にそれが哀歌となった。
 第1回新日展作の連綿をおさえて染入るような作品の静謐感は哀愁が筆に隠る。そして今作の「しら梅」の4歌。静かに細く切れ込む筆線の呼吸は、しら梅を詠んだ牧水の心の襞をなぞろうとしているようだ。
 一首目が展覧会目録(ただ一木あおみてみゆる…)と相違していたことを付記する。(松)

 


 

 
 

 

 

   

しら梅

軒毎に梅の花咲き乾ぎたる…(外三首)若山牧水