第32回選抜 香瓔百十人展より
会長 榎倉 香邨
「音はしぐれか(種田山頭火)」
榎倉香邨会長の山頭火句「音はしぐれか」を紹介させていただく。
ここ十年ほど、一貫して若山牧水の歌をテーマに制作を重ねてきた香邨氏だが、歌人の生活環境と心の動きまでを徹底取材するというモチベーションを持っての制作は、まさに作家たらんという自負を前面に打ち出したものであった。これは、書が単なる線と構成の美だけではなく、撰文した文章、語句の持つ文学的要素までを線と構成に取込む総合芸術であるという意識にほかならない。どう見せるか、どのように感じて欲しいかという作家の感動のメッセージが作品であり、それは薄紙に下に朱紙を敷くことや、表具までに気が配られていることでも分かる。
この度の、山頭火の作品を見て最初に感じたのは「響き」である。目一杯の大振りの文字でありながら窮屈でない。漢字作品と見まごう芯の強さに柔軟さが絶妙に加味されている。部屋に篭った山頭火の耳にザザッという雨音、その光景がみえてくるではないか。弊紙20周年展の折りの、凛とした「分け入れば水音」を思いだした。その作家魂に最敬礼である。(松)
