第28回選抜香瓔110人展
会長
榎倉 香邨
第28回選抜香瓔百十人展より、榎倉香邨会長「冬の日ざし」をピックアップさせて頂いた。
榎倉氏は昨年の2月、東京と神戸で「牧水をかく」と題したセンセーショナルな大個展を開催した。牧水の生家はもとより、生前牧水が訪れた所に実際に足を運び、詠まれた歌を辿ったという徹底した取材から生まれた作品群に圧倒されたのは筆者ばかりであるまい。
氏は2003年の第3回個展の頃より、牧水の歌を書くことがメインとなってきており、ここ2年程は日展、二十人展も含め、殆どすべての作品が牧水を主題として歌の心と自らの感性を重ねた書作姿勢を貫いており、ライフワークを見つけた作家の高まりが感じられて所作の快調振りも窺える。前回、薄紙に赤い色の裏打ちを挟み独創的味わいを出したが、今回も秋から冬の様相を歌った牧水の5首に、「冬の日ざし」をイメージして額縁に仕掛けた明かりで視覚的に演出した。掲載は会場写真だが、その雰囲気は伝わるだろう。
それにしても、5首の季節感のゆったりとした流れが心地よい。「石越ゆる水のまろみ」を眺めた心かなしい秋、周りがひそまりてゆく中、ひなたの冬木に風がさわぎ、「澄みとほる冬の日ざし」に見入ってしまう牧水のこころ、そして徳利を傾け夜長を楽しみ、焚き火の煙香る山家の冬の夕げと歌を繋ぐ。自然と酒をこよなく愛した牧水の人となりが滲んでくる。 (松)
