― 交響曲的味わいの六曲屏風 ―

会長 榎 倉 香 邨

 日展参事、榎倉香邨氏の主宰する第25回選抜香瓔五十人展が新春の銀座、東京セントラル美術館で開催された。これまでも五十人から百人規模の選抜展を企画してきているが、この会は線質の切れと構成、そして表装までも含めた平面作品の在り方を榎倉氏の指導のもとに取り組んできており、これまで何度か連続で企画実践してきた古筆の拡大臨書を活かした、自運の大作への展開が感じられる展覧となった。その中、榎倉氏の六曲屏風「ひなげしの花」を紹介させて頂く。
 与謝野晶子の歌九首を、風わたる草原をイメージするような流れで構成したかなの超大作だが、「ひなげしを分けていで来しめでたさも わすれさるべきよの心地する」で静かに始まり、だんだんと盛上げて四紙目で最高潮を迎え、静かに収束していく交響曲を彷彿とさせる雄大な流れが感じられて思わず立ち止まってしまう。薄鼠色の屏風にひなげしの花が二輪と風を感じさせる雲紋が描かれている。薄香色の料紙とのマッチングにも品格があり、音楽的な響きをより高尚なものへと誘ってくれる。薄く細い線もきっちりと墨が立っているから強弱の機微を主張しており、実に心地よい雰囲気を醸している。榎倉氏の名作の一点に入る。(松)

 第25回選抜香瓔五十人展より

                                

ひなげしの花 〈屏風〉182×480