新書派協会創立五十周年記念

近藤摂南 自選展

 

 日展参事、新書派協会会長の近藤摂南氏が、新書派協会創立五十周年を記念して在住の生駒市芸術会館で自選展を開催した。昭和29年の第10回日展特選の杜甫五言律詩をはじめとして平成15年の第36回新書派協会展出品の山頭火の句「ほろほろ酔うて木の葉ふる」まで50点の作品が並んだ。
 近藤摂南氏は大正11年大阪市の生れ。厳父の方針に従い幼い頃より書を習い、中学に入ると本格的に書に取り組むべく炭山南木に師事した。氏はめきめきと頭角を現し、19歳で東方書道会展で特選を受賞する。記録には第三部漢字臨書に推薦の木村知石に続いて江川蒼竹、佐藤苔石ら五人の中に摂南氏の特選者の名前がある。この年が戦時のため旧東方書道会展の最終展となったが、漢字で広津雲仙が推薦、宮本竹逕が褒状を受賞している。この受賞は書の全国区への鮮烈なデビューとなり、津金寉仙を知る契機ともなった。
 戦後、昭和23年に日展に書が新設されると初年度から連続入選を果たし、29年には特選を受賞。書家としての基盤を確立するが、ここからが鬼才近藤摂南ぶりを発揮するのである。関西には日本書芸院という大所帯があり、個の洗練よりも組織力の強化を優先する方向性に摂南氏は真っ向から異を唱えたのである。
 南木師の神融会、辻元史邑率いる日本書芸院を離脱し、関西の地で新書派協会を創設、正に孤立を覚悟の旗揚げであったが、書の芸術性・思想性という個の発動を重視した津金寉仙の門を叩くのである。かねてから尊敬していた寉仙との出会いは詩文書・調和体作品の芸術性の指向を加速させた。そして上掲の記念碑ともいえる作品「韃靼海峡」が生まれるのである。安西冬衛の詩「春」を絵画空間的に捉え、文字の響きを形象化して配置する。これは一切を削ぎ取った抽象絵画の名作に等しい。新書派協会が古典臨書に立脚しながら調和体作品を貫いてきた本質がこの作品にある。(松)

   ■ 1月12日〜16日     ■生駒市芸術会館・美楽来

 

                              

    「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った[安西冬衛の詩]」
     第4回新書派協会展(昭和41年)  34×137cm