第33回紫苑の会書展より

代表 大石三世子

●5月10日〜13日
● 有楽町朝日ギャラリー(マリオン11F)

 

 天地から迫る藍のグラデーション。分け入る仮名は良寛歌「わがやどに植ゑて育てし百草は風の心にまかすなりけり」。第33回紫苑の会書展に出品された大石三世子代表の作である。大石さんといえば日展、読売書法展などで活躍し、仮名書の名門栴檀社の理事長を務める書壇中枢の作家としての存在は大きい。自社中である紫苑の会においてはより自由な世界を求め、毎回趣向を凝らした作品の発表に努めている。今作は阿波藍の諧調がまず目を引く。深さの中から滲み出る明るい光は他の藍にはない阿波藍独自の冴え感、ジャパンブルーの呼称がよく似合う天然の美しさだ。そしてそれを更に生かしているのが大石さんの仮名のありようだ。良寛歌固有の無執着の遊び心を、軽やかな筆致と連綿で書きつなぎ、その潤渇に明るい線条が実に藍に映えているではないか。自然の産物ともいえる藍と墨のコラボレーション。染色家と書家の合作ともいえよう。そしてそこに描出された情景世界に新たな表現領域の可能性を窺わせる。それは書表現の広がりにもつながるだろう。(篠原)

 

 

わがやどに…(良寛)