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第29回紫苑の会書展より −藍と連綿美と万葉の情− 主 宰 大石三世子
大石三世子さん主宰の紫苑の会書展では毎回、社中展ならではのいろいろの作品様式を見ることができる。しかしそれは決して派手ではなく、あくまでも仮名の墨美が尊重されている。だから好感が持てる。そんな中、今回展の大石主宰の作品に随分引きつけられた。会場入口からの奥中央にそれはあった。白と青と黒のコントラストが鮮やかに目に入った。白は空、青は連山、黒は墨の流れとすぐ判断できた。万葉の世界であろうとも想像した。眼前にしたとき、そこには何とも言えないノスタルジーがあった。「三輪山をしかも隠すか雲だにも情(こころ)あらなむ隠そふべしや」大石さんの手が千年の時を追体験するかのように静かに流れ、静謐の行間を演出する。そして生まれた正方形の空間の背後には藍の濃淡で染まった連山が横たわる。この藍は徳島県指定無形文化財に登録されている藍染だ。近江遷都時の大和国への愛惜の念。万葉人の情(こころ)が藍と連綿美によって紡ぎだされている静寂の世界を見た。
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三輪山をしかも隠すか雲だにも 情あらなむ隠さふべしや (額田王) |