第32回書泉会展より


主宰

下谷 洋子

「空ひろく…」〈窪田空穂〉

 

 高崎で開催された自社中書泉会展から下谷洋子さんのメイン作を紹介する。窪田空穂の歌「空ひろく光みちたる六里ヶ原草しきて座せば心幽けき」。今展のテーマ「群馬ゆかりの歌を書く」に合わせ選文した。六里ヶ原は浅間山北斜面の広大な高原。人の手が入るまでの原野は容易に想像がつく。空穂の写生と抒情を下谷さん持ち前のセンスで昇華させたかな作品である。白地と茶紙の二紙貼り合わせは原野を二分する果てなき空と微動だにしない広遼の大地に例えたものであろう。白(空)の比率を若干多くしたのも頷けるところだ。線は颯爽とし、空間を引き締めている。前半は真っ直ぐ行が立ち、光に満ちた六里ヶ原の空を線の響きと白の輝きで表出。後半は大地に座した身の意匠のごとく行は下がり、落款部も含めて塊を成す。そうして出来た両者の対比はまるで風景そのものに見えるではないか。
 下谷さんは来年1月2日に新宿高島屋で開幕する「第62 回現代書道二十人展」に初選出された。期待は大きい。(篠原)