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第30回記念書泉会展より
下谷 洋子 「冴ゆる夜の」
今年の毎日書道展で最高賞文部科学大臣賞に輝いた下谷洋子さん。直後の自社中書泉会展も30 回の記念展を迎え、喜ばしいことが重なった。と同時に下谷さんにかかる期待はますます大きくなっただろう。しかしそれをバネに更なる力量の発揮へと向かうのが、下谷洋子という作家の真骨頂である。そしてそれを確信させたのが今展出品作中の2点だ。1点は12面に掲載した桂信子句。峻立の一行に決意の書を見た思いがある。そしてここで紹介するスピノザの言葉「光が光と闇とを顕わす」。哲学者の何とも深く難しい言葉を素材にした。「真理という光は、真理自身と虚偽とを浮き彫りにする」と解せるだろうか。つまり本質を追究すればするほど、ことの虚実が明確になるとも言えようか。拡大臨書の推奨も古筆の本質に迫ろうとする大道なのである。さてこの書、見れば見るほど余白の輝きが増す。濃紺のマットや茶の筋がその一役を買っているが、線の緊迫抜きに白は語れない。潤渇ともに張りつめた線が字間、行間に呼応し、光を顕わせている。(篠原) |
光が光と闇とを顕わす(スピノザ) |