第5回 丹羽 蒼處 近作展
−「字へのこだわり」渾身の近作揃う−


● 9月15日(火)〜20日(日)(11時〜19時、最終日は17時まで)
● 銀座・鳩居堂画廊4F) 

 書壇会派から離れ、毎年の社中展、5年ごとの個展を活動の中心に据える丹羽蒼處5回目の近作個展が開催間近である。コロナ禍で多くの展覧会が中止・延期となる中、自社中展「第23回蒼芝文會書展」(6面詳報)を6月に開催。引き続き今展も、充分な感染対策のもと予定通り開催される。
 出品は32点。そのうち15点を掲載した。何れの作にも丹羽蒼處が追ってきた「字へのこだわり」が窺える。ここでいくつかの丹羽語録を紹介したい。ある時の会話の中でさりげなく発した言葉。「本当の技巧は地味な字にある。そこに大変な技巧が潜んでいる。ちゃんと字を見なきゃ。王羲之の草書にしても正面を向いているんですよ」「今、皆、斜に構えた格好いい字ばかり。正面を向く難しさがわかっているのか」「大きく書いて面白くというのは可能ですよ。だけど小さく書いて面白くは大変です」丹羽が言う「正面」とは何か。更に丹羽は「今、一番字に欠けているのが丁寧さ」とも言う。つまり古典の名筆を凝視し、向き合うことで見えてくるもの、それは線の内奥に潜むものであり用筆の必然でもあろう。それらを自風に取り込もうとするとき、格好良さなぞ無縁。真摯に丁寧に見抜いた技法を積み上げる。その結果、そこに定着した字は自ずと正面を向くのではないか。しかも大きな字に虚勢を張るのではなく、古典がそうであるように自分の肩幅の世界で仕事を成し遂げようとするのである。相当の集中持続を要すると思われるが、丹羽にとってはまさに「こころよき疲れなるかな」(啄木 一握の砂より)ではないだろうか。丹羽がよく言う「字が好きだから」の単純なフレーズが文学への共感とともに一連の作品から伝わりくる展観になるだろう。ぜひ会場で、作家丹羽蒼處渾身の近作と向き合い、そして「字」を感じてほしい。
 蒼芝文會主宰 竹青社理事長 神奈川書家三十人展メンバー (篠原)

 

陸游詩

蘇東坡詩

 

李商隠詩 聞歌

静處景倶勝 間中趣自知

白居易 琵琶行〈帖・部分〉

 

 

李商隠詩 宮詩

李賀詩 楊生青花紫石硯歌

 

王安石聯句

七言聯句

左思句 間居隘巷室邇心遐

王安石聯句

石川啄木 一握の砂より

直而婉

 

董其昌 畫禅室随筆 評法書〈巻子・部分〉

陸希聲句 小_亭高滌煩襟