吉川 蕉仙
の書
●4月29日〜5月6日
● 京都文化博物館5F展
都渉成園の池の畔に一人佇む書者の写真が、書展会場内に飾られていた。この孤高のイメージこそ、吉川蕉仙の人も書も象徴しているのではないだろうか。
戦後の書は、いわゆる明清調、金石調のファッション性に彩られた。これに背を向けるように王羲之一筋に取り組んだのが、西では中野越南、東では津金?仙、赤羽雲庭で、もし吉川の先輩でいうなら山内観である。
プロである以上、書人も心技体の一致を求める。その中でも精神性を第一に置くのが前記の人のタイプで、吉川蕉仙もまた、そうした書人の系譜に属する。
このたびの個展は、昭和53年の日展特選『陸游雑感四首』にはじまる自選作と新作で構成されている。
自選には、平成19年の日展大臣賞の『蹇騰(勢い)』、平成23年の日展『轍』、平成25年の読売書法展『厳格』同じく平成26年の『矩を踰えず』等があって、すでに吉川蕉仙の書の精神世界を遺憾なく示している。
新作は、その上に構築されて『王羲之蘭亭集詩』、『陶淵明五言古詩』、『王維苦熱詩』等の多字数の行草体、『五穀豊饒』、『金剛心』、『変則通』、『開心顔』、『破顔微笑』等の大字の行草体、『蓮如の言葉』、『いろは歌』、『漱石の言葉の句』等の調和体と多岐にわたるが、共通するのは、あくまで羲之への拘りであろう。選文も書と一体である。
『良寛長歌』は長丁場の巻子で、書法的には日展特選時代を想いおこさせるが、気持はあくまで境地である。(田宮文平)
