退職記念

―古代文字書法の表現研究―
井上清雅 書法展

● 2月7日〜16日 
● 市川市文化会館 展示室

 

 日展会員、読売書法会常任理事、謙慎書道会常任理事など、書壇要職にある井上清雅氏がこの春、長年教鞭をとった和洋女子大学教授を定年退職することから、退職記念としての個展が開催された。会場の市川市文化会館展示室は東山魁夷監修による明るい照明が設備されている。その中を二部に分け、大作16点、日展・読売書法展・謙慎書道会展出品の歴代代表作22点の38点で構成した。紙は白、大作のマットは青で統一され、白い照明によく映える。装飾よりも書そのもので勝負してきた井上清雅の真骨頂を改めて知る機会ともなった。
 井上清雅といえば近年の右上がりの篆書がすぐ浮かぶ。特に日展会員賞受賞作や東京都知事賞受賞作に見る豊潤でありながらも横画は右に上がり、縦画の起筆部に拳のような膨らみを持たせた独特のスタイルは現書壇では唯一無二の存在。しかしここに行き着くまでには長い研鑚の時間を要した。個展タイトルにあるように「古代文字書法の表現研究」は大学における一貫した研究テーマであり、32年を積み重ねてきた。掲載の10点を見てもその変遷は理解できるだろう。1992年の「篆書七言二句」は大学着任時の作、2009年の日展特選作の頃はその清冽な水平垂直線が目を引く。そこから10年、この独自の書法が生まれることになる。生涯のテーマは「金石の氣」。まだまだ続く清雅書法の進展から目が離せない。(篠原)

 

方鼎銘文(2006年)〈2200×1330〉

石鼓文 田車碣一節(2015年)〈2830×780×2〉

篆隷対聯二種(徐三庚・金冬心)
(2023年)〈2280×370×2・二種〉

 

篆書七言二句(1992年・第9回読売書法展・読売新聞社賞)〈680×1700〉

詩經 秦風・小戎(2006年・第38回日展・日展特選)〈740×1680〉

詩經 大雅・文王有聲(2009年・第41回日展・日展特選)〈530×2280〉

康有為句(2018年・改組新第5回日展
・日展会員賞〈2280×680〉

詩經 王風・君子陽陽
(2003年・第20回読売書法展)〈1630×750〉

潘尼詩(2005年・第67回謙慎書道会展)
〈2280×780〉

蘇東坡詩(2020年・改組新第7回日展
・東京都知事賞)〈2280×680〉