| ―書業五十年―
「最初で最後」と言う清水透石渾身の大個展が東京銀座画廊美術館7階全フロアを使用して開催された。まず意外だったのが初個展ということ。書壇重要ポストに位置する作家だけによけいに思ったがよくよく聞いてみると、透石の師今関脩竹の完璧主義を追うにつれ、個展などは論外であったと言う。その実、脩竹師の個展履歴はない。そんな透石が今展初日前日に満80歳を迎える。つまり計算上、師より長く生きたことになる。そこで透石は「皆様からの強い要望に抗しきれず、後進に道を開くことも考え、重い腰を上げること」になったと言う。だから最初で最後なのだろう。壁面79点、巻子2点、有田焼6点に透石の書美が満載された充実の会場から、ここでは6点を紹介させていただく。まずは万葉集からの「うらうらに…」。六曲の大作だが墨色の潤いが目に飛び込み、歌意の柔らかな季節感が静かに奏でられる。渇筆、破筆による直線の線条も見どころだ。利休四首の調和体には漢字書法の確かさも窺える。巻子金槐和歌集の繊細には驚いた。右に流れる行がまるで空間に浮遊するがごとき。薄い細線の動きに心も動かされる。長塚節「山吹は…」。写生歌に秀でた長塚の気品平静を書線に託した作。散らしにもゆとりがあり、淡いマット柄に呼応した空間だ。虚子四句は最後に仕上げた作。四種の墨色と軸の装飾が作品感を高めている。
もてなしの心を花に…(高浜虚子四句)軸四連幅
白露もこぼさぬ萩のうねりかな(芭蕉)有田焼 深川製磁〈深川剛作〉
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うらうらに照れる春日に…(万葉集) 135×53×6
山吹は折ればやさしき…(長塚 節) 70×135
茶の湯とは只湯を沸かし…(利休百首より) 135×53×4
金槐和歌集 春の歌(源実朝)〈巻子〉 30×350 |