第43回日展より
文化功労者
日比野 光鳳
平成23年10月25日、書道界に新たな偉業が達成された。京都・かな書の名門水穂会会長の日比野光鳳氏が、父五鳳翁と親子二代の文化功労者に顕彰されたのである。3年前の親子二代の芸術院会員就任も書道界では初めての快挙であったが、その一歩上を行く文化功労者、弊紙からも改めて顕彰を祝福したい。
さて、日比野光鳳氏の作品、その人となりを長期間に亘り弊紙にて紹介させていただいてきたが、20数年前から随分書きたいことを記させていただいてきた。例えば、五鳳師逝去後に数年遺作展示がなされたが、「記念展だけにする方が良いのでは」とも。それに対して光鳳氏は怒りも見せず、筋の通った話しには耳を傾けてくれた。その腰の低さは今も変らない。しかし、その頃は偉大な父を持つ後継者の強烈なプレッシャーの真っ只中にいたと推測できるが、光鳳氏はその重圧を逆に糧とすることに成功された。これは、父に対する一種の反発心から同志社の経済学部を卒業後、一度社会人として宝酒造に入社し、外の世界から書道界を見てきた経験がおおいに活きていると思える。五鳳調を踏襲するなかで「京の雅のかな美」を追求、次第に柔軟な流れを手中にして平成9年の第29回日展で内閣総理大臣賞を受賞するのである。父の呪縛から抜け出し、大臣賞受賞の自信が平成11年の日本芸術院賞の受賞へと繋がっていくのであるが、その後生死に関わる大病を経験するのである。病を克服し、生かされている自分に対峙したとき何かが変わったのであろう。自ら標榜してきた「京の雅」の表現研究を一気に加速させ、平成20年芸術院会員に就任、その後も作品の深化は進み、今年の水穂会では自分自身の空間性を過去の作品に対比して見直しを図っている。
さて、今回の日展作品は、新古今和歌集から藤原良経の春秋歌二首をオーソドックスな山形構成で書しているが、正に自然体で、清新な気が行間に通る伸びやかさがある。潤行と渇行の対比リズムも一切意図的なにおいがしなくて品格がある。更なる活躍を祈りたい。
