第55回現代書道二十人展より
日本芸術院会員
水穂会会長
日比野 光鳳
第55回現代書道二十人展より日本芸術院会員の日比野光鳳氏の金屏風四曲半双の「春夏秋冬」を紹介させていただく。
昨年の54回展にも光鳳氏は金屏風四曲に「梅、桜、藤、紅葉」を出品し、かな書による京の雅の具現に本格的に取り組みだした気配が窺えたが、連続試行の本作には確固たる「光鳳かな」の有りようを示した一作と位置づけできる品格漂う風合いが感じられた。文字は寸松庵の叙情感ある典雅な息遣いを踏襲し、1紙目のゆったりとした流れを受けて2紙への展開に繋がっていく。前作でも歌の題字を作頭に記すことで、観者の視線を巧く誘導していたが、今回は題字の位置が紙に対して平行でなく、やや左上がりとなりより豊かなムーブマンを演出している。
また、金に映える薄あかね色の料紙が実によくマッチして情感を更に深めて、空間に響くかな文字の調べを味わい深くしている。構成的には昨年と大きな違いがないのだが、空間性の広がりが更に深くなったのは、前述の題字視点の工夫と料紙の色、そして淡墨渇筆の効用が挙げられる。全体的に潤墨部が押さえられている為、スーッと料紙に消えゆくような筆線の醸す雰囲気が典雅な呼応感を生みだしているのである。
これまで、光鳳氏の代表的な大字作品は、山形構成を主体とした交響楽的展開の趣があったが、文字の流れにめりはりがあり、どちらかといえば洋楽的な起承転結を感じるものであった。それが、日本のしっとりとした空気を感じるものへと変わりつつある。日本のかな書壇に凛然たる足跡を残した五鳳翁を父に持つ書家の「血」の成せる変遷といえば良いのであろうか。
そう言えば、小品の全体的捌き方も変わってきた。良く見せようという作品からの圧力がない。書したいものを書くという何の衒いもない心の持ちようが「気持ち良く書かされている」場を創り出しているのかもしれない。心、技、体の充実は深奥の域である。健康に留意され、日本情緒の美の世界、京の雅の本道をこれからも見せて頂きたいと思う。(松原)
