第54回現代書道二十人展より

日本芸術院会員

 日比野 光鳳

「梅、桜、藤、紅葉」

 厳父五鳳翁に続いて日本芸術院を拝命して一年余り、書道界初の快挙にいまだその余韻が残るが、昨年の二十人展、東京水穂展、水穂本展、読売展、第41回日展と着実に風格を増してきた感ある光鳳氏である。第54回現代二十人展より四曲屏風作品「四季」をピックアップさせて頂いた。
 今展には上掲の他に8面カラー紹介の扇面「雪間の草/藤原家隆」、および優雅で切れある山形構成の「賀茂の柳/藤原頼氏」と寸松庵調の展開の「祇園清水/正岡子規」が並んだが、幽玄な水墨画を彷彿とさせる金屏風に浮かぶ本作は圧巻で、今までの質実な美の表具とは一味違った京の華美を醸していた。
 作品は左右の金屏風の余白を残して、「梅」、「桜」、「藤」、「紅葉」の季節を代表する歌が張り交ぜでなく一枚ものとして継がれている。その一連の視点の流れに題字が心地よく映るのがまたいい。梅は本来春の季語であるが、梅に雪という組み合わせは常にあり、今の暦では冬にあたるため、光鳳氏はあえて晩冬に見立てたとみるべきであろう。題字に季節の温度を感じるのも日本人ならではのものである。そうした趣を持たせながら、各歌の余白構成が単独として異なる味わいを醸しながら次の歌へと響き繋がっている。2紙目の後3行を上げて3紙の歌も同列に配して大きな展開部を構築し同様に盛り上げながら最終歌に繋げてフッと終わる、独特の交響詩的展開である。4紙を縦断させる視点移動と、歌と歌の間にある題字による空間を絶妙に配した構想がこの作品を香り立つ魅力あるものとしていると言って過言でないだろう。
 こうした4紙での作品に1紙ずつの良し悪しを論ずるのは適切ではないが、ある意味1紙目の「梅」のふくよかな時間的空間感を感じるものが生まれたからこそ、続く作品が構築出来ていったと思われるがどうであろう。
 今屏風作が、「京の雅」の具現に一心を注いできた日比野光鳳氏の面目躍如たる1点となることは間違いあるまい。更なる活躍を期待したいと思う。         (松)


    梅  うめが香にむかしをとへば春の月
        こたへぬかげぞそでにうつれる(藤原家隆)
     桜  さくら花ゆめかうつゝか白雲の
        たえてつれなき峰の春風(藤原家隆)
     藤  かくてこそみまくほしけれ百代を
        かけてにほへるふぢ波の花(延喜御歌)
     紅葉 故郷はちるもみぢばにうづもれて
        のきのしのぶに秋風ぞふく(源俊頼)


            (四季/新古今和歌集) 60×61×4