第45回
水穂書展より

会長 日比野  光鳳

 第45回水穂書展が開催された。これまで恒例であった8月初旬の会期から今回初めてお盆開けとなったが、例年より一際残暑厳しく暑い夏の書展のイメージは健在だった。周知のごとく本会は昭和一代の名匠といわれた日比野五鳳翁の創設した会であり、翁亡き後子息の日比野光鳳氏がその遺託を継ぎ今日に至っている。平成11年光鳳会長の日本芸術院賞の受賞に続き、本年池田桂鳳副会長・理事長が恩賜賞・日本芸術院賞を受賞し、かつてない盤石の体制を築きつつあると言える。
 さて、光鳳会長の今出品作を紹介させて頂く。藤原定家の歌「旅人の袖吹きかへす秋風に 夕日寂しき山のかけはし」をシンプルで品のよい六曲屏風仕立てで5紙に書き下し、6紙目を落款で締めた作品で、潤墨部と渇筆部が重厚な響きを醸している。それでいて柔らかな広がりを感じるのは、余白の演出が自然体になってきた証であろうか。また、「数年前病で倒れ、完全復帰した今、命の尊さを実感致しました」と語る光鳳氏、見るもの聞くものが全て新鮮に映ると言う、その内面的な輝きが作品に表出し始めていると思うのは筆者だけではあるまい。
 父であり師であった五鳳翁は、日本芸術院会員、文化功労者として、かな書の中に漢字の骨格と日本語特有の言葉の響きを深い余白空間の中に融合させた独自性ある新世界を開拓した書家として知られるが、光鳳会長は、そうした基盤の上に京都の雅を表現しようとしている。そのたゆまない表現研究の中で、親子二代の日本芸術院会員誕生も夢ではあるまい。今後益々の活躍を祈念したい。

 

        作品「秋風」(藤原定家)の前で