第13回東京
水穂会書展より

会長 日比野  光鳳

 1999年日本芸術院賞受賞後父五鳳翁の呪縛から解き放たれたように益々自風のかな書の在り方を深めている日比野光鳳氏。「京の雅をかな書で表現したい」が光鳳氏の制作理念としてあり、父の影響を受けつつも異なる自風の展開を思考し続けている。この第38回日展に於ても日展常務理事として第五科審査主任を受け持ち、今や重要なポストを歴任し周囲からの期待度も高い。
 東京での水穂会書展もすっかり定着し、五鳳翁の系列を汲む本会の書に対する関東の書家の関心度も大きく会場は例年多くの人で賑わっている。今回の光鳳氏の出品作は古今和歌集より「花」と百人一首より「式子内親王」の歌の2点。「花」は頭揃えの平様な構図だが、筆線のしなやかな運筆が字間の呼応に深さを持たし、ゆったりとした行間に染み入るような流れを作っている。一切の衒いを捨てた中に高貴な品格が生まれた。もう1点の扇面は定家への悲恋を詠んだ歌「玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする」だが、歌意の切ない思いを消えゆくような小字にのせた。正に雅の中の悲哀を巧く演出しており、着々と目標に向かってその深度を深めているといえよう。

  「百人一首より」