第43回水穂書展より

会 長
日比野 光鳳

 「夏と秋とゆきかふ空のかよひぢは かたへすずしき風や吹くらむ」と六曲屏風に仕立てた日比野光鳳氏の第43回水穂書展出品作である。古今和歌集の夏歌の最終に選されたこの歌は、水無月のつごもりの日によめるとあり、つごもりの翌日から秋になる。つまり立秋である。一般展示は8月3日から7日の立秋まで開催されたが、まさにこの歌の意にぴったりのシチュエーションであり、行く夏と来る秋とが大空の通路(かよひぢ)ですれちがい、恒例の水穂書展の後に豊かで涼しい風が流れてくるという自身の思いとを重ねた光鳳会長の粋を感じることができる作品といえよう。構成的にはややオーソドックスだが、風景をイメージした叙情性を表現する方向でなく、今後に向けた強い意志をゆったりとした運筆に込めたように窺える。特に後半の三行は潤渇と行間対比に絶妙な響きがあり凛とした構築性をもっている。
 こうしたメッセージ性をもたせたコンセプトある作品創りは、惰性に流れがちの書展に非常に大切なことではないだろうか。

 

   

            「夏と秋と…(古今和歌集)」 170×50(×6)