卒寿記念
杭迫柏樹 展
●11月19日〜24日
●京都文化博物館6F
会場の通路の壁面に、60点連作の「生々流転」が展示されていた。『誕』で始まり『新・芽・長』と続き、卒寿を迎えた境地『甦』まで、落款印は全て「九十柏樹」、これからの書に向かう杭迫氏の決意が溢れていた。氏より屏風作品を中心とした「卒寿展」を、京都文化博物館の畳の会場で予定されているとお聞きしたのが今年の春。やや照明を落とした会場1、2室の金屏風を中心に4室に展示された作品群が観者を圧倒する。全数を数え忘れたが、卒寿の数であったかもしれない。
その中、六曲一双金屏風「京洛四季」(陽明学者・高瀬惺軒詩)の前でのギャラリートーク画像と松樹屏風と一対の「歳寒然後知 松柏之後彫也」及び『蘭亭序』八柱第三本から文字を除いた原紙(乾隆帝印入り・日本初見)に王羲之評(唐・太宗皇帝)「飄如遊雲 矯若驚龍」を書した貴重な作品3点を挙げた。
杭迫氏の作品は実に多彩で書の筆法本質に迫るものから、公共場の銘文、寺院・店などの扁額、ユニクロTシャツのデザイン文字など現代空間にフィットするものまで幅広い。また、そうした異業種で書を活かす術を実践している希少な作家でもある。ギャラリートークで氏が語った「近頃思うこと」。書は言葉の持つ力を表現する術に尽きる。書き手も尊敬できる人物が残した言葉、文字(文章、詩)を正しく受け取る教養を磨かねばならない。今の書は「字づら」を優先しがちだが、卒寿を機に改めて「書」とは何かに取組みたいとのメッセージが新鮮であった。日展名誉会員、日本藝術院賞、興朋会会長。(松)
