新井光風作品展 III 2026
―新作・八十九歳 命のかたち―


● 2月5日〜9日
● 東京芸術劇場

 

 恩賜賞作家で、謙慎書道会顧問ほか多くの書関連の重責を担い、今も全うされている新井光風氏の3回目の個展が開催された。
 「新作・八十九歳 命のかたち」と銘打った48点すべて大作で、これまで追い求めてきた「金文」の展開に絞り込んでの発表は、展覧者の足を釘付けにする大きなオーラを放っており、その真摯でぶれない書学姿勢に改めて圧倒されたのは筆者だけではあるまい。それほどのインパクトがあった。通常個展はメインとサブで構成され表現領域の広さを示すものだが、あえて意図的に試練を課して挑戦する。それが八十九歳の自分と書の戦い方と言い切る強さ、まさに稀有な書人と感服したしだいである。
 48点のうち5点をピックアップさせて頂いた。先ず、会場入口順路壁面の3点で足が止まる。「敬道」は禮記・學記からの引用で、西川寧師への思いの丈の発露か、潤渇の呼応が絶妙な響きで安定した空間を震わせる。「曲成」は易經・繋辭上傳より。斜画の求心力と遠心力の競合を意図し、余白への放射力と構成の躍動感を顕在させた。そして、不思議な膨張感と求心力を交互に感じた「易氣」。正に氣の流れを彷彿とさせる。二文字を包む外白と氣字下の余白の広がりの緩衝。作品群の中で異質な展開の作品は「青山一髪」。超遠望する山の景をイメージした作。縦作品では「秉彝」に滲みる趣があった。
 一本の線に見える筆線は、篆刻の刻線を彷彿させ、大胆・巧妙に視点を導いている。 (松)

 

秉彝(詩經・大雅・烝民)

 

 

敬道(禮記・學記)

 

青山一髪(蘇軾・澄邁驛通潮閣詩)

曲成(易經・繋辭上傳)

易氣