八十歳・命のかたち
新井光風 作品展II
全作品新作・老子荘子語句
●4月4日(火)〜9日(日)
● 東京銀座画廊・美術館7F展
2013年の第1回展では「回顧自選作品」と「新作・老子荘子語句」の二部門に新井芸術の全容が展開された。あれから丸四年。今回は全作未発表の新作38点が東京銀座画廊・美術館七階全フロアに展覧される。初めにこの話を聞いた時はいささか驚いた。そしてこの四年間の軌跡を知るにつれ、それは増していった。何と今回展の企画構想は1回展終了の年の暮れまでに出来上がっていたらしい。38点の原稿までもが作られていたというのだ。そして2014年初、会場確保とともに制作期間二年半を算出。その通り昨年夏には全作の完成に辿り着く。この完璧なまでの計画実行力を備える新井光風の根幹は一体どこに端を発しているのだろうか。
新井光風の書のスタートは、十七、八歳の頃神田でたまたま手にした西川寧編「書道講座」。その高度な内容に向きになったと言う。以来今日まで、座右の書として常に手の届くところに置いてある。もう一つ遡れば、小学生頃に初めて毛筆を持ったときの「ぐにゃ」とした感触に異常なくらい興味があったとも言う。字の出来映えの競争よりもその事実が重要だと回顧する。更に楷書「張猛龍碑」拓本を見たときは一気に惚れ込み、釈文を暗誦しながら徹底的な臨書に明け暮れたらしい。今でも古典第一は張猛龍碑だ。変っていないのである。比較するものがないと言ってもいいだろう。つまり自分自身が遭遇し、発見し、得た手応えに絶対の信念を持ち続けてきたともいえよう。ある日、師西川寧から「冒険しなさい」の言葉をもらう。その真意を考えたと言う。辿り着いたのは「命がけで字を書く」。奇異に走るのではなく、本気で命を懸けて書かなければ、本当の冒険にらない。個展タイトルにある「八十歳・命のかたち−」もこのときの思いが信念となり、「自らの生命の断面を紙面に定着させることを主眼に、書というものの本質の追求を重ねてきた」のだ。まさに「冬夏青青」ではないか。新井光風迸る信念の書の大個展が待たれる。 日展理事/読売書法会常任総務/謙慎書道会顧問 (篠原)
