回顧自選作品
新作・老子荘子語句


新井光風作品展


●4月2日[火]〜4月7日[日]
● 東京銀座画廊・美術館

 新井光風渾身の大個展がこの四月、東京銀座画廊美術館七階会場にて開催される。「回顧自選作品」と「新作・老子荘子語句」の二部門に新井芸術の全容が展開されることになる。前者には日本芸術院賞・恩賜賞を受けた第35回日展(2003年)出品作「明且鮮」を含む一連の篆書作が、時を経て再び衆目に開示される。後者では近年取り組んできた行書を更に掘り下げ、篆書や簡牘の筆意を蔵した新井光風独自の書風の新世界が、老子、荘子の素材のもと展開される。機熟しての初個展である。新旧両面の新井光風の書の世界を一堂に展観できるときが間近い。
 新井光風といえば、今や名実ともに漢字書壇の第一人者。その新井氏が初めての個展というから意外である。しかし逆に新井光風らしいとも言えるのではないか。それは彼の入念な下調べ、下準備を経ての作品制作と重なるのである。師、西川寧がそうであったように、光風もまた作品草稿の前の段階を重視する。例えば簡牘資料を基に制作に入るとすれば、一般的にはそこから字を選出し、草稿作りに励むことになるだろう。しかし光風は違う。まずその資料の全文に釈文を付けてゆくのである。簡牘ともなれば何千字、時には万の単位の字数にもなるだろう。この作業だけでも気が遠くなるのに更に今度は、それを原稿用紙に模写する。そうすることで字画、字形の特徴が自然に身に付くと言うのだ。そしていよいよ筆で臨書をし、綿密な草稿へと結びつけてゆくことになる。なるほどこの工程を解すれば、光風の作品の完璧な空間構成もよく理解できるのである。そしてこの制作プロセスこそが、作家新井光風の生き方そのものでもあるのだ。こう考えると光風にとっての個展はそう簡単なものではないし、彼の生き方がそれをさせなかったのである。だからこそ今回の初個展が待ち遠しい。
 書業五十年、いよいよ盛んなる新井光風の全容が遂に一堂になる。(篠原)
 日展常務理事・謙慎書道会会長・朝日
 現代書道二十人展メンバー

 

   

明且鮮

老子語