平成25 年度
文化勲章受章

― 流麗さの中に凜とした品格―

高木 聖鶴


 平成25年10月25日、書家・高木聖鶴氏が文化勲章を受章された。歴代書家での受章は、昭和60年の西川寧、平成2年の金子鴎亭、同4年の青山杉雨、同10年の村上三島、同12年の杉岡華邨、同16年の小林斗あんの各氏に次ぎ、9年ぶり7人目の快挙である。11月3日に皇居で行なわれた親授式で、天皇陛下から直接勲章を授与され、続く拝謁の儀式では受章者5名を代表して聖鶴氏が「それぞれの分野において一層の精進を重ねる決意です」と挨拶され、陛下は「今後ともそれぞれの分野の発展のために尽くされるよう願っております」と述べられた。前々からの高木聖鶴ファンである筆者にとっても最高の喜びである。
 この「一層の精進」という言葉の重みを、聖鶴氏は正に一貫して実践してきた希有な書家といえる。「書を生涯学習に、これが天命と定めて出発した以上、人の3倍努力してきました。人の倍では人並みにしかならないですから。独学の頃は1日10時間は勉強していました」「目標を持って一つの古典を5年間頑張る。すると今まで見えなかったものが見えてくる。上には上の境地がなんぼでもありますから」とは氏の語録の一端である。「書は人なり」と言うが、結局は人が作品となるということを改めて思い起こさせてくれる。
 高木聖鶴氏は昭和22年に内田鶴雲氏に師事し、25年日展初入選、48年に日展特選、そして平成7年には日本藝術院賞を受賞されて、更に平成18年、文化功労者に顕彰された。内田鶴雲師の書によせるすざましいまでの情熱、勉強の深さに敬服し、「仮名だけでなく、漢字をしっかり勉強しろ」「まねをするな、自分の字を書け」の指導法を踏襲、師の創設した朝陽書道会を引き継いだ後も自分自身の理念として実践してきた。
 聖鶴氏は生まれ育った故郷をこよなく愛し、ずっと生活と制作の拠点としてあるが、古代のロマンが残る吉備の地を詠んだ歌をよく作品とされている。かな美の原点といわれる平安古筆の線美の表情の豊かさを再認識して現代書空間にどう生かすかを真剣に考えている作家である。上掲作は、数ある傑作の中でも筆者の思いひとしおの作品。書線の切れと主張のバランスが絶妙で品格が宿る。 (松原)


 

 

 

「古今和歌集抄」

平成3年 日展 内閣総理大臣賞 [額] 総社市文化振興財団蔵  106×182cm