第63回朝陽書道会展より

 

会長

高木 聖鶴

 11面に代表作品を紹介させて頂いたが、聖鶴会長の出品作3点を挙げた。
 グラディカルな薄赤紫の紙に書された作品は、冒頭の「春霞たてるやいづこみよしのの吉野の山に雪はふりつつ」と古今和歌集の春歌からしんしんと入り、興が乗って潤墨で大きく展開、最後は消え入るようにふっと終わる。歌の意を感じながら、自分自身の美意識が紡ぐ自然体の流れであり、澄んだ線質が心地よい品格を醸し出している。
 高木聖鶴氏は大正12年生まれだから、今年88歳。内田鶴雲に師事し、書道一筋を貫いて平成18年に文化功労者の顕彰を受けたが、決して奢らず、専門のかなばかりでなく、漢字の古典臨書も自らに課して常に真摯に表現の幅を広げてこられたが、今もその姿勢は揺らがず、家に居られる時は毎日筆を握られている。
 特別出品として「古今和歌集抄」と「唐 懐素自叙帖」の2点の各10mに及ぶ巻子作品が陳列されたが、共に制作時間は5時間(夜9時から夜中2時)、その集中力たるや若い人顔負けである。自叙帖は興が乗ってきた中頃の用筆に注目した。古今和歌集抄は丸暗記するほど幾度も書いている。線が瑞々しい。(松)

 

 

春霞たてるやいづこみよしのの…

 

古今和歌集 抄(巻子)

 

唐 懐素自叙帖 臨 (巻子)