第27回読売書法展より

最高顧問

高木 聖鶴

 今年もお盆開けの8月20日より国立新美術館とサンシャインシティ文化会館の2会場で第27回読売書法展が開催され、2万8千142点の出品総数から入選1万1千211点と役員6千436点が並んだ。
 8月7日の立秋を過ぎて尚、暑さは一向に衰えの気配もみせない21日、汗を拭きつつ国立新美術館を訪れた。そして、涼しげな作品に思わず立ち止まったのが高木聖鶴氏の作品で、青空にかかる霞雲のような爽やかな料紙に潤墨部の視点導入が鮮烈に響く作品で、一時の涼場を得た思いだった。
 これまでも、聖鶴氏は西行の歌をよく書かれているが、今回は「山里は霞わたれるけしきにて空にや春の立つを知るらん」、「梅が香にたぐへて聞けばうぐひすの聲なつかしき春の山里」、「雲なくておぼろなりとも見ゆるかな霞かかれる春の夜の月」、「山川の岩にせかれてちる波をあられとぞみる夏の夜の月」の4首を山家集より撰文して15行に展開した。ゆるやかに始まり、前半なかばに少し盛り上げ、そしてフォルテッシモの最高潮に揺らぎを加味して展開、最後は押さえながら静かに余韻を残し、再びフォルテッシモで締める。これは正に交響曲の流れそのものである。
 そればかりでなく、撰文も粋な配慮がある。1首目の始まりと2首目の終わりに「山里」を対比させ、3首目と4首目の最後を春と夏の「夜の月」で韻を踏んでいる。4首はまた、初春から初夏までの季節の流れを捉えており、料紙の色柄は恐らく1首目の「霞みがかる空の上に春が来た」というイメージから選んだものと推測できる。これらは、作家のモチベーションのありようであり、聖鶴氏は日本の心をかなの線美に託した作品を求めていると言って良いだろう。本物(古筆)に親しみ自らの審美眼を絶えずみがき、自風に昇華させる。そうした古筆の線美の流麗さ、素美と雅、歌の深い心が書作品として結合したとき、日本の四季の風景をも感じさせるものとなるのである。(松原)

 

山家集抄